オバマ大統領は「クジラ構文」をどういう意図で使っているのか。
2013年の大統領就任演説から(説明のため一部抜粋。日本語だけ読んでも分かる説明にしています。)
The American people can no more meet the demands of today’s world by acting alone than American soldiers could have met the forces of fascism or communism with muskets and militias.
「アメリカ国民が個々に行動するだけでは現代社会の要求には応えられない。それは、かつてのアメリカ兵がマスケット銃と民兵部隊だけでファシズムや共産主義の勢力に対抗できなかったであろうのと同じだ」
長い一文���が、オバマがこの主張をどう組み立てているか、頭の中を想像してみる。
① まず伝えたい主張を考える。
The American people cannot meet the demands of today’s world by acting alone.
「アメリカ国民は個々に行動するだけでは現代社会の要求(要請、課題)には対応できない」
ここがメインの主張。ただ、これだけだと聴衆はピンと来ない、かもしれない。
② これを説得力のある主張にするため、聞き手が「それは無理だ」と納得しやすい同じ主張構造の比較対象を考える。
American soldiers could not have met the forces of fascism or communism with muskets and militias.
「アメリカ兵がマスケット銃と民兵部隊だけでファシズムや共産主義の勢力に対抗することなどできなかっただろう」
「それはそうだろう」、と思えるような例を持ってくることで説得力が増す。
③ この2つを no more … than で結びつける。
こうすることで、
「個人の力だけでは現代の課題に対応できない」という抽象的な主張を、頭に絵が浮かぶような相手が納得するイメージに結びつけることによって説得力を高める効果を見事に果たしている。
無用に難しいのに使わないと槍玉に上げられがちなの「クジラ構文」だが、これは単なる否定の比較構文ではなく、「相手を説得するためのレトリック」として捉えると英語話者の思考過程が(少し)覗けるようで面白い。