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抹茶デイズ
@0dlckn
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抹茶デイズ
@0dlckn
about 1 month ago
星鯨号✴︎――深い海を旅する、巨大な鯨型探検船。 操縦室、客室、展望室、古い航海日誌、地図の切れ端、夜になると歌が聞こえる部屋……。 3匹の猫たちは、この船でまだ誰も知らない海の物語へ。 『抹茶デイズ』海底大冒険編、出航🐾🌌
抹茶デイズ
@0dlckn
about 2 hours ago
第七章 女優猫ルリ 七日目。 世論が荒れ始めた。 早く突入しろ。 いや、待て。 犯人を許すな。 人質を危険にさらすな。 新聞は号外を出し、 評論家は毎晩しゃべった。 テレビ局からルリへ出演依頼が来た。 「元女優として、一言お願いします」 ルリは断った。 しかし、 一つだけ条件を出した。 「生放送なら出ます」 夜八時。 全国中継。 司会者が尋ねる。 「ルリさん、この事件をどうご覧になりますか」 ルリはカメラを見た。 昔なら、 その赤いランプが点灯した瞬間、 女優になった。 しかし今夜は違った。 「私は舞台に長くいました」 ルリは言った。 「舞台では、観客が多いほど降りにくくなります」 司会者が黙る。 「間違った台詞を言っても」 「途中で役をやめたくなっても」 「千人が見ていると、人は続けてしまう」 「だから」 ルリはカメラを見た。 「見ている私たちも、気をつけなければいけないと思います」 「これは娯楽ではありません」 スタジオが静かになった。 「中にいる人にも」 「外にいる人にも」 「帰る場所が必要です」 放送はそこでCMに入った。
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抹茶デイズ
@0dlckn
1 day ago
#佐倉市
#高崎川
抹茶デイズ
@0dlckn
2 days ago
第六章 カップ麺 事件六日目。 吹雪。 気温マイナス十四度。 交代勤務の警察官たちは、雪の中で食事を取った。 湯を注ぐだけの紙カップ麺。 発売されたばかりの新しい食べ物だった。 テレビカメラが、その姿を映した。 翌日。 抹茶タウン中で売り切れた。 カリカリのお姉さんは、そのニュースを見て怒った。 「違うでしょ」 大量のおにぎりを握っていた。 「何が?」 ちゅーおじが聞いた。 「食べ物の宣伝じゃないでしょう」 カリカリのお姉さんは、おにぎりを箱に詰める。 「寒いところで働いてる人がいるんでしょう」 味噌汁。 ゆで卵。 お茶。 猫たちにはカリカリ。 人間には普通のご飯。 「大きなことはできないけど」 そう言って、 また握る。 ハクはその姿を見ていた。 以前、母の記録にあった言葉を思い出した。 宇宙を理解する前に、隣にいる命を見なさい。 なぜか今なら、その意味が少し分かった。
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抹茶デイズ
@0dlckn
3 days ago
第五章 十二の空席 事件三日目。 別の知らせが入った。 山中の小屋から、 大量の荷物が見つかった。 十二人分。 しかし、人はいなかった。 ハクは現場へ向かった。 雪の中。 捨てられた毛布。 食器。 ノート。 壁には言葉が書かれていた。 もっと正しく 弱さを捨てろ 迷いは裏切り みょー和尚は、それを長い間見ていた。 「怖いのう」 がぷが聞く。 「何が?」 「悪い言葉ではないところじゃ」 みょーは答えた。 「正しくあれ」 「弱さを乗り越えよ」 「迷うな」 「どれも、一つだけ見れば立派に聞こえる」 そして壁を見る。 「だから怖い」 ハクはノートを開いた。 最初のページには、夢が書かれていた。 誰も貧しくない町。 誰も差別されない町。 誰も孤独ではない町。 しかしページが進むにつれ、 言葉が変わる。 議論。 批判。 反省。 自己観測。 処罰。 純化。 そして最後。 名前だけが並び、 赤線で消されていた。 ハクはノートを閉じた。 「十二人」 ミナトが言った。 「まだ確認はできてない」 「うん」 ハクは答えた。 「でも、たぶん」 そこから先は言わなかった。
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抹茶デイズ
@0dlckn
3 days ago
第四章 一般猫 その夜。 テレビ局の中継車の横を、一匹の黒猫が歩いていた。 誰も気にしない。 警察官の足元を通る。 記者の横を通る。 雪の上を歩く。 ごく普通の猫。 チヌークだった。 首輪なし。 徽章なし。 特殊装備らしいものもなし。 だから誰も見ない。 それがチヌークの最大の装備だった。 「こちらチヌーク」 小型送信機から声。 「裏手到着」 ミナトが受信する。 「排気口を探して」 「了解」 数分後。 「発見」 みけちゃんが設計図を見る。 「そこから三メートル右」 「雪だ」 「掘って」 「猫に?」 「隠密でしょ」 沈黙。 ザッ。 「了解」 二十分後。 チヌークは地下観測室へ侵入した。 真っ暗だった。 古い机。 錆びた棚。 割れた記録計。 そして壁に、 奇妙な円が描かれていた。 「……これは」 チヌークが止まる。 中央に、一つの文字。 ZERO ハクが無線越しに聞いた。 「何がある?」 「古い観測記録」 「読める?」 「一部だけ」 紙にはこう書かれていた。 観測対象R-0 記憶密度の異常集積を確認 消去してはならない 忘却は解決ではない その文字を見た瞬間。 ハクの耳が動いた。 「母さんだ」
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抹茶デイズ
@0dlckn
4 days ago
第三章 母の観測所 白嶺山荘は、雪の中に沈んでいた。 警察車両。 消防車。 投光器。 無線車。 記者。 テレビ局。 そして、その外側に野次馬。 テレビカメラは巨大だった。 肩に乗せることなどできない。 三脚に載せ、太いケーブルを引きずりながら移動させる。 山荘の姿が生中継されると、抹茶タウンの電器店の店頭には人だかりができた。 食堂でも。 銭湯でも。 駅でも。 皆が同じ画面を見ていた。 ルリは、その光景を自宅のテレビで見ていた。 かつて抹茶劇場で主演を務めた女優猫。 何百回も舞台に立った。 何百回も観客の視線を浴びた。 テレビの中で、山荘の窓が大写しになる。 ルリはつぶやいた。 「これは舞台に似ている」 隣にいたカリカリのお姉さんが聞く。 「舞台?」 「ええ」 ルリはテレビを見たまま答えた。 「でも、いちばん危ない舞台」 「どうして?」 「見ている人が増えるほど、降りられなくなるから」 ⸻ 山荘から二百メートル離れた臨時指揮所。 がぷ副市長が到着した。 「突入は?」 警察幹部が答える。 「まだです」 「それでいい」 がぷは言った。 「人質がいる」 「しかし長期化すれば――」 「長期化してもいい」 がぷは珍しく強い声を出した。 「町のメンツなんてどうでもいい」 「生きて帰ってもらう」 その会話を、ハクは黙って聞いていた。 みけちゃんが山荘の古い設計図を持ってきた。 「見つけた」 紙は黄ばんでいた。 天文台の倉庫から発見されたものだった。 右下。 設計担当者の欄に、名前がある。 ハクはそこを見た。 母の名前だった。 ハクは生後二か月で母と別れた。 記憶にはない。 写真しか知らない。 白衣。 静かな目。 淡い毛色。 星を見上げる横顔。 その母が、かつてここにいた。 みけちゃんが図面を指差す。 「地下に観測室がある」 ミナトが見る。 「現在の図面には載ってない」 「閉鎖されたから」 さらに、一本の細い通路。 山荘の裏側から地下へ通じていた。 ハクが言った。 「チヌーク」 無線が鳴る。 ザッ。 「こちらチヌーク」 「仕事」 「了解」 ザッ。
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抹茶デイズ
@0dlckn
4 days ago
抹茶デイズ
@0dlckn
4 days ago
第二章 白嶺山荘 午前七時十二分。 警察から副市長室へ一本の電話が入った。 がぷ副市長はまだ朝ごはんを食べていた。 机には焼き魚。 味噌汁。 白いご飯。 電話を受けたがぷは、箸を置いた。 「五人?」 電話の向こうが何かを言った。 「山荘に?」 また沈黙。 「人が中にいるの?」 がぷの顔から眠気が消えた。 五人の若者が白嶺山荘へ入り、管理人の女性を外へ出さず、立てこもった。 彼らは数年前から活動していた小さな集団だった。 名前は「黎明観測団」。 世界は間違った方向へ進んでいる。 社会は欺瞞に満ちている。 一度すべてをゼロへ戻さなければならない。 そんな思想を持っていた。 最初は読書会だった。 次に討論会になった。 やがて、仲間以外とは話さなくなった。 反対意見を言う者は、 「理解が足りない」 とされた。 さらに、 「自己観測」 という行為が始まった。 自分の弱さを告白する。 仲間がそれを批判する。 正しくなるまで繰り返す。 そのうち、 「より正しい者」が、 「正しくない者」を裁くようになった。 五人は冬の山へ逃げ、 白嶺山荘へ入った。 そして言った。 「世界をゼロへ戻す」 ⸻ 午後一時。 一台の小さな四輪駆動車が、雪道を登っていた。 車体側面には、小さな文字。 MATCHA001 正式名称、 零式観測車。 通称、ゼロガタ。 運転席は、ちゅーおじ。 助手席には白い猫。 ぼくの猫。 後部座席にはハクとミナト。 屋根の上ではない。 今日はさすがに寒すぎるので、みょー和尚は後席の毛布に包まっていた。 「四駆とはいえ、これはなかなかやな」 ちゅーおじがハンドルを握る。 雪はタイヤの半分まで積もっていた。 ミナトが計器を見る。 「偏差上昇」 「どれくらい?」 「通常の六倍」 ハクが顔を上げた。 山の向こうを見ている。 「いる」 「誰が?」 ちゅーおじが聞いた。 ハクは答えた。 「ラグドール・ゼロ」 車内から言葉が消えた。 ぼくの猫だけが、 にゃ。 と小さく鳴いた。
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抹茶デイズ
@0dlckn
5 days ago
抹茶デイズ長編特別篇 白嶺山荘の十日間 第一章 テレビがまだ木の箱だったころ それは、抹茶タウンのテレビがまだ木の箱だったころの話だ。 チャンネルを変えるには、立ち上がって丸いダイヤルを回した。 電話にはコードがあり、町の人々は番号を覚えていた。 夜になると商店街には赤や青のネオンが灯り、駅前の喫茶店では、銀色の灰皿の隣でコーヒーが湯気を立てていた。 冬の朝。 新聞配達の自転車が霜を踏んだ。 国立抹茶天文台では、ミナト観測長がいつものように午前五時四十分の記録をつけていた。 気温、マイナス十一度。 風、北北西。 抹茶湖、全面結氷。 時空偏差。 通常値の三・七倍。 ミナトは鉛筆を止めた。 「……おかしい」 研究室の奥で、みけちゃんが振り向いた。 「また?」 「また、じゃない」 ミナトはグラフ用紙を机の上に広げた。 針は、北西を指していた。 抹茶タウンから山道を三時間。 白嶺連峰。 その中腹に、一軒の古い山荘がある。 白嶺山荘。 かつて天文台の冬季観測所として使われ、二十年前に閉鎖された建物だった。 みけちゃんが眉をひそめた。 「ここ……」 「知ってる?」 「ハクのお母さんが使っていた観測所」 部屋が静かになった。 ミナトは何も言わなかった。 やがて、遠くから鐘が聞こえた。 カァン――。 カァン――。 町の朝六時を知らせる鐘。 鐘楼では、小さなネズミのリンネが、いつものように大きな綱を引いていた。 まだ誰も知らなかった。 その鐘が、十日後。 抹茶タウン全体にとって、まったく別の意味を持つことになるとは。
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抹茶デイズ
@0dlckn
5 days ago
抹茶デイズ
@0dlckn
5 days ago
終章 ゼロではなく、一 数か月後。 山中で十二人の遺体が発見された。 黎明観測団の仲間たちだった。 自己観測。 純化。 正しさ。 そんな言葉の果てに、 命を失っていた。 町は長い間、その事件について話した。 なぜ若者たちはそこまで行ったのか。 どこで止められたのか。 誰が悪かったのか。 答えは一つにはならなかった。 国立抹茶天文台。 春。 ハクは母の研究ノートを最後まで整理した。 最後の封筒に、 短い手紙が入っていた。 ハクへ。 もしこれを読む日が来たなら。 世界を全部理解しようとしなくていい。 宇宙は大きすぎる。 時間も長すぎる。 正しさも、人の数だけある。 だから、 ゼロを探さないでください。 一を大切にしてください。 目の前にいる、 たった一つの命を。 ハクは長い間、その手紙を見ていた。 やがて研究室の外へ出た。 湖畔では、 がぷが昼寝していた。 みょー和尚は日向ぼっこ。 みけちゃんとミナトは観測機材を運んでいる。 カリカリのお姉さんが猫たちにご飯を配っている。 チヌークは一般猫のふりをして、そのカリカリを普通に食べていた。 ルリはベンチで昔の台本を読んでいた。 ちゅーおじはMATCHA001の傷を眺めながら、 「まあ、これぐらいならええか」 と言っていた。 助手席では、 ぼくの猫が眠っている。 遠く。 鐘楼。 リンネが綱を引いた。 カァン――。 夕方の鐘。 ハクは空を見上げた。 そこに母はいない。 ラグドール・ゼロも見えない。 ただ青い空がある。 それでよかった。 ハクはみんなのところへ歩いていった。 がぷが目を覚ます。 「ハクー」 「なに?」 「晩ごはん何にする?」 ハクは少し考えた。 そして答えた。 「普通のでいい」 「普通って?」 「焼き魚とか」 ちゅーおじが振り返る。 「それが一番ええな」 誰かが笑った。 誰かがカリカリを食べた。 誰かが鐘を鳴らした。 世界は変わらなかった。 革命も起きなかった。 全部が正しくなることもなかった。 それでも、 その夜。 抹茶タウンでは、 十一人と何匹かの猫が、 同じ場所で晩ごはんを食べた。 後年、白嶺山荘事件について書かれた本は、 何十冊にもなった。 難しい分析も、 政治の議論も、 社会の議論も残った。 しかし、 抹茶タウン時空観測課の公式記録。 事件最終ページ。 ミナト観測長が残した文章は、 たった二行だった。 世界をゼロにする必要はない。 今日の一を、明日へ運べばいい。 その横には、 誰が押したのか分からない、 小さな猫の肉球の跡が残っている。
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抹茶デイズ
@0dlckn
5 days ago
第十章 十回目の鐘 午前九時五十九分。 全国のテレビが白嶺山荘を映していた。 雪。 警察官。 放水車。 そして一台の小さな四輪駆動車。 MATCHA001。 その後ろに、 巨大な鉄球。 実況アナウンサーが声を張り上げる。 しかし山の中では、 テレビの声など聞こえない。 聞こえたのは、 鐘だった。 カァン――。 一回。 リンネが綱を引く。 カァン――。 二回。 小さな体が持ち上がる。 カァン――。 三回。 抹茶湖を音が渡る。 四回。 五回。 六回。 山荘の中でも、 かすかに聞こえた。 七回。 八回。 九回。 ハクは雪の中で目を閉じた。 そして、 十回。 カァン――。 ちゅーおじが無線を取る。 「MATCHA001、行く」 アクセル。 タイヤが雪を掻く。 鉄球が持ち上がる。 一度。 壁へ。 ドン。 雪が落ちる。 二度。 ドン。 壁に亀裂。 放水。 警察が前進する。 三度目。 ドン。 壁が崩れた。 ⸻ 銃声。 怒号。 水。 煙。 割れるガラス。 テレビ映像は揺れた。 がぷは指揮所で拳を握っていた。 ミナトは時間を記録し続けた。 みけちゃんは医療班との連絡を取った。 チヌークは崩れた地下道から内部へ走った。 みょー和尚は静かに祈った。 カリカリのお姉さんは救護所で毛布を広げた。 ルリはテレビを消した。 もう見る必要はないと思った。 ぼくの猫は、 MATCHA001の助手席で、 じっと山荘を見ていた。 そしてハクは、 誰よりも静かだった。 午後六時十三分。 人質救出。 午後六時三十九分。 五人全員確保。 十日間が終わった。
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抹茶デイズ
@0dlckn
5 days ago
第九章 鐘 九日目。 警察は翌朝の突入を決定した。 同じころ。 山荘内部の通信が途絶えた。 人質の状態も分からない。 チヌークから報告。 「地下通路、途中で崩落」 進入不可能。 残された方法は正面だった。 問題が一つ。 山荘の壁は異常に厚い。 古い観測所だったため、 冬山用の強化構造になっていた。 重機が必要だった。 しかし山道は狭く、 大型車両は入れない。 ちゅーおじがMATCHA001を見た。 「これで引くか」 みけちゃんが振り返る。 「何を?」 ちゅーおじが指差した。 雪の中。 旧鉱山施設に残されていた巨大な鉄球。 かつて岩壁を崩すために使われたもの。 ミナトが呆れた。 「本気?」 「道幅的にはこれしかない」 「MATCHA001壊れるよ」 「車は直せる」 ちゅーおじは言った。 「人は直らん」 がぷが聞いていた。 「やろう」 作戦開始は午前十時。 その時刻に合わせ、 リンネへ連絡が入った。 「鐘を鳴らしてほしい」 リンネが驚く。 「何回?」 「十回」 「どうして?」 がぷは少し考えた。 「帰る時間を知らせるため」
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抹茶デイズ
@0dlckn
5 days ago
第八章 ラグドール・ゼロ 八日目の午前二時。 MATCHA001の警報が鳴った。 ビー。 ビー。 ビー。 ミナトが飛び起きる。 「偏差十二倍」 みけちゃんが計器を見る。 「こんなの見たことない」 ぼくの猫が突然、助手席で立ち上がった。 山荘を見ている。 毛が逆立っていた。 ハクにも見えた。 雪の向こう。 巨大な猫の輪郭。 白とも灰色ともつかない。 長い毛。 青い目。 山より大きく、 空より遠い。 ラグドール・ゼロ。 それは生き物ではない。 忘れられた記憶。 消された名前。 帰れなかった者。 語られなかった悲しみ。 そうしたものが集まって生まれた、 記憶の集合体。 山荘の五人は、 ゼロを「世界を初期化する存在」だと思っていた。 しかし、 違った。 ゼロは消すものではない。 消されたものが集まった存在だった。 「逆だ」 ハクが言った。 ミナトが振り返る。 「何が?」 「全部逆だったんだ」 ハクは母のノートを開く。 最後のページ。 そこには一文だけあった。 ゼロとは無ではない。 誰かが無かったことにした、すべてである。 ハクは目を閉じた。 その瞬間。 母の声を聞いた。 ――ハク。 「母さん?」 誰もいない。 しかし確かに声がした。 ――探し続けなくていい。 ――分からないものは、分からないままでいい。 ――町へ帰りなさい。 ハクの目から、一滴だけ涙が落ちた。 みょー和尚は何も言わなかった。 ただ隣に座った。
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抹茶デイズ
@0dlckn
5 days ago
第七章 女優猫ルリ 七日目。 世論が荒れ始めた。 早く突入しろ。 いや、待て。 犯人を許すな。 人質を危険にさらすな。 新聞は号外を出し、 評論家は毎晩しゃべった。 テレビ局からルリへ出演依頼が来た。 「元女優として、一言お願いします」 ルリは断った。 しかし、 一つだけ条件を出した。 「生放送なら出ます」 夜八時。 全国中継。 司会者が尋ねる。 「ルリさん、この事件をどうご覧になりますか」 ルリはカメラを見た。 昔なら、 その赤いランプが点灯した瞬間、 女優になった。 しかし今夜は違った。 「私は舞台に長くいました」 ルリは言った。 「舞台では、観客が多いほど降りにくくなります」 司会者が黙る。 「間違った台詞を言っても」 「途中で役をやめたくなっても」 「千人が見ていると、人は続けてしまう」 「だから」 ルリはカメラを見た。 「見ている私たちも、気をつけなければいけないと思います」 「これは娯楽ではありません」 スタジオが静かになった。 「中にいる人にも」 「外にいる人にも」 「帰る場所が必要です」 放送はそこでCMに入った。
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抹茶デイズ
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6 days ago
抹茶デイズ
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6 days ago
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9 days ago
新しい交通カードブランド「GAPU」🐾 抹茶デイズの副市長・がぷが、毎日の移動をやさしくつなぎます。 電車も、バスも、お買い物も。 GAPU — やさしくつながる、まいにちの一枚。
#GAPU
#抹茶デイズ
#がぷ
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新しい交通カードブランド「GAPU」🐾 抹茶デイズの副市長・がぷが、毎日の移動をやさしくつなぎます。 電車も、バスも、お買い物も。 GAPU — やさしくつながる、まいにちの一枚。
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