【Sunday Note更新】
先週のSunday Noteに寄せられた「日本のドローン産業のこの10年を振り返ってほしい」というコメントがきっかけで、今回の記事を書きました。
考えてみると、日本のドローン産業の10年は、単純な成功物語でも、単純な失敗物語でもありません。
2015年、日本はドローンに対してアクセルとブレーキを同時に踏みました。
一方では、安倍首相がドローン配送の実現に言及し、「空の産業革命」への期待が一気に高まりました。ドローンは、物流、インフラ点検、災害対応、農業、産業保守を変える技術として語られるようになった。
他方では、同じ年に首相官邸屋上でドローンが発見され、社会はそのリスクにも向き合うことになりました。空を開くということは、単に規制を緩和することではなく、リスクを社会に移転することでもある。だからこそ、日本は安全、規制、セキュリティ、社会受容性を重視して制度を作ってきた。
航空法の整備、機体登録、リモートID、操縦ライセンス、機体認証、レベル4飛行。NEDOをはじめとする公的プロジェクト。物流、点検、防災、インフラ管理の実証。さらに、ACSL、Blue innovation、Liberaware、Terra Droneのように、上場するドローン関連企業も生まれました。
これは大きな成果です。
ただし、今回の記事で考えたかったのは、その先です。
日本はドローンを飛ばすためのルールを作った。
では、市場を作れたのか。
実証は継続利用に変わったのか。
補助金は顧客需要に変わったのか。
制度は事業機会に変わったのか。
国内の難しい現場課題は、世界に輸出できる価値に変わったのか。
機体販売は、データ、運用、保守、教育、認証、改善サイクルまで含めた産業に変わったのか。
私自身、外資系ドローン企業を日本に持ち込み、日本のインフラ企業や通信会社との資本・事業連携に関わり、補助金事業の提案書を書き、実証の現場にも関わってきました。また、A.L.I. Technologiesでは、NASDAQ上場という強い物語と、その後に事業を持続させる難しさの両方を見ました。
補助金事業には、外から見ると分かりにくい独特のドラマがあります。
長い公募要領を読み込み、政策の意図を解釈し、今ある技術と未来のあるべき姿の間をつなぐ提案を作る。採択されれば、チームは約束した成果を出すために本気で走る。実証を成功させることには、確かに一つの正義があります。
しかし、実証が成功しても、それが市場になるとは限らない。
報告書は受理される。デモは成功する。技術は動く。
それでも、翌年に同じ顧客が予算を取り、調達し、運用し、保守し、改善を続けるとは限らない。
ここに、日本のドローン産業がこの10年で抱えてきた大きな論点があると思っています。
日本に技術がなかったわけではない。
現場課題がなかったわけでもない。
政策的な支援がなかったわけでもない。
足りなかったのは、技術を市場に変える仕組みだったのではないか。
ドローンは、飛んだ瞬間にインフラになるわけではありません。
翌朝も誰かが頼り、予算が付き、保守され、地域に受け入れられ、集めたデータが意思決定を変えるようになって、初めてインフラになる。
だから、これからの10年に必要なのは、さらに多くの実証ではなく、継続利用、調達、保守、教育、データ活用、そして国際展開まで含めた「信頼の設計」だと思います。
今回のSunday Noteは、日本への批判としてではなく、日本のドローン産業へのエールとして書きました。
Flying is no longer the goal.
The real question is what Japan can design with drones for the world.
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