20年前、あるコンサートで知り合ったアメリカ人、ティモシー。珍しく私と趣味も合い、私はバージニア州、彼はボストン在住で、オハイオ州のコロンバスやクリーブランドの「Rock N Roll Hall of Fame」でデートをしていた。彼は読書家で「源氏物語」の英訳本を読んでおり、映画は小津と溝口のファン、という絶滅危惧種のアメリカ人。
What's App(欧米のLINE)を利用して一か月に一度くらい話す。数年前、「Perfect Days」に感動した、もし見ていないなら絶対見て、と言ったので、がんばって見た。一日に10分くらい見て、2週間かかった。
ティモシーはこんな普通の労働者が「読書」をすること、ロックを聴くことなどに驚いたという。しかもウイリアム・フォークナーやパトリシア・ハイスミス。私が「日本ではホームレスでも新聞を読むで」と返事をすると更に驚いていた。でも私が「退屈で、見終わるのに2週間もかかった」と正直に言うと、「えっ?だってヴィム・ヴェンダースの映画だよ!彼の他の映画見た事ある?」とやや軽蔑気味に言われた。
オラオラ、私に映画を語るな。ヴェンダースは全部見ているし、作風も知っている。もう60年、70年前の作風ですがな。日本の生活であんなにゆっくり時間が流れるのって、もうふた回りくらい昔だし、世界が評価しているほど、すばらしい映画だとは思わん、とはっきり言った。ちょっとがっかりしたようだ。
二日前には「座頭市を知っているか?」と突然言ってきた。知っとりますがな。人生の不条理を引き受けて、アメリカの「逃亡者」みたいに、行く先々で何かしらに巻き込まれるという物語で、私はずっと見ていたよ、と答えたら、今から見るんだ、ワクワク。ヴェンダースから座頭市にシフトした。
「私はこの半年間、ずっとHomeland(クレア・デインズ)を三周目だよ、と言ったら「僕も見てみようかな」。座頭市の感想が楽しみ。
Xにも映画好きな知り合いが何人かおり、あれがおもしろい、これがいい、と教えてくれるけれど、そばにこんな話をする人がもういない。