「担当するICU患者に、何をすればいいのかわからない」
多くのICUローテの先生が初めに直面する問題です。私自身、わからないことが何かわからないので、ICUに近づきたくない時期が長くありました。
初学者に向けた、少し乱暴な考え方を以下に紹介します。
ICU入室理由の大部分は呼吸または循環動態の破綻なので、まずはそれのみに注目しています。
1.ベッドサイドに行き、①患者さんの様子・訴え、②モニター、③患者さんに繋がっている薬剤・機器、を確認する
2.現時点までの呼吸/循環指標(ひとまずP/F比、PaCO2、MAP、Lac)と、薬剤・機器使用の推移(傾向)から、治療を「足す」(≒どんどん重症化している)フェーズか、「引く」フェーズか考える
3-A. 「足す」フェーズの場合、そのまま悪化する場合の戦術を事前に考えます
① 指標(P/F比、PaCO2、MAP、Lac)がさらに悪くなるとしたら、次に何を足すか?
② どうしたらその機器/薬剤を足さずにすむか?
③ そのために自分の勤務帯で何ができるか?
3-B. 「引く」フェーズの場合、何を「引いたら」退室できるかを考えます
① ICUでしか使えない(使いにくい)機器/薬剤はどれか?
② どうしたらその機器/薬剤をなくせる/減らせるか?
③ そのために自分の勤務帯で何ができるか?
そこまで考えて時間があったら、次は、新たな合併症を予防すること考えます。
4.By Systemに沿って、適正化されているか、漏れがないかのチェック
(長くなるので詳細は省きます)
ここまで考えてやることが思いつかなければ、次の患者さんにすすみます。
もちろん、病態を考えてそれに対処する、というのが原則ですが、様々な病態がまじりあうICUでは意外と難しいので、まずはどのフェーズにいるのか、その結果次に足す/引く薬剤・機器は何か、ということだけ考えるのでもいいかと思います。
頻度でいうと、「引く」フェーズにあることが多く、そのなかでも大体が、人工呼吸器・補助循環・カテコラミン・CRRTが律速段階となるので、それぞれの適応について考えることになります。
最後に、ICUとしては、あくまでICU退室が「ゴール」となりますが、それは患者さんのゴールとは全くもって違います。退室できる状態になっても、多くの場合は退院まで治療がたくさん残っています。患者さんのゴール(=長期目標)を意識しながら診療することを忘れないようにしたいと思います。
急性薬物中毒の消化管除染(活性炭、胃洗浄、腸洗浄)の考え方について。
Intensive care medicine誌の急性中毒レビュー⑦、という位置づけですが、今回は原著のフローチャートをもとに一部改変したものをつけており、私見もだいぶ入っています。
消化管除染に関する国際的な指針は、1997年に発表されたAACT/EAPCCT(American Academy of Clinical Toxicology / European Association of Poisons Centres and Clinical Toxicologists)による声明以降、おおざっぱに言うと以下のようになっていますが、RCTは非常に限られており、エビデンスという意味では弱い部分が多いです。
活性炭:ルーチンでは投与しないが、他の消化管除染と比較すると有効性がある。1時間を超えての投与も症例により有効である。
胃洗浄:1時間以内でも有効とはいえない。(活性炭を優先。)施行するなら専門施設。
腸洗浄:一部の中毒(徐放製剤/腸溶剤、金属(鉄・鉛・亜鉛)、ボディーパッカー)では否定する根拠はない。
ということでフローチャートを見るうえでの個人的ポイントは、
・活性炭の適応があり、禁忌がなければ活性炭投与を行う(過去の「1時間以内」という時間制限は見直されつつある)
・活性炭が無効または施行できない場合、重篤かつ他の治療法がない場合に腸洗浄や胃洗浄が検討されるが、有効とするエビデンスは乏しいため適応は非常に限られる(さらに胃洗浄は32-40Fなどの太い胃管を必要とする)
ちなみに改変した主な部分は、胃洗浄・腸洗浄の適応部分です。
現実的に頻度が高いのは、活性炭投与の適応を追加/反復投与含めて検討することでしょうか。