【LinkedIn Sunday Note更新】
市場が拡大したとしても、国産ドローンメーカーが生き残れるとは限らない。
今週は、国産農業用ドローンの先駆者であったナイルワークスの事業終了を切り口に、日本のドローン産業が抱えてきた「長すぎた春」について書きました。
農水省のデータによれば、日本でドローンを用いた農薬等の散布面積は、2016年度のわずか700haから、2024年度には約120万haまで拡大しています。
つまり、農業用ドローンの市場が育たなかったわけではありません。
それでも、ナイルワークスは生き残れなかった。
同社は単に国産機体を作っていた会社ではありません。AIによる作物解析や農業データ、現場の作業運用までを見据え、農業のプラットフォームを目指していました。
政府系ファンドであるINCJからの支援を受け、住友商事は出資だけでなく、量産化や事業化、さらには経営人材の投入にまで踏み込んでいました。
技術がなかったわけではない。
市場がなかったわけでもない。
支援がなかったわけでもない。
それでも、先駆者は市場の中心に残ることができなかった。
2019年、中国の農業テック企業XAGを訪問した際、Co-FounderのJustin Gong氏にこう尋ねたことがあります。
「この機体を日本に持ち帰って売れば、日本でも同じような規模の事業を作れるのか?」
彼の答えは明快でした。
「機体を売るだけでは成功しない。プラットフォーマーにならなければならない」
XAGは当時すでに、ドローンだけでなく、RTK基地局、オペレーター人材、農業データ、周辺サービスまでを一つの事業基盤として構築していました。
一方で、ナイルワークスも同じ未来を見ていたはずです。
では、違いは何だったのか。
私は、構想の差というよりも、企業が燃え尽きる前に、プラットフォームを支えるだけの市場と事業基盤が立ち上がったかどうかの差だったのではないかと考えています。
いま日本は、国産ドローンのサプライチェーン強化に向けて、大規模な公的支援を進めようとしています。
しかし、問われるべきは機体を作れるかだけではありません。
その機体を継続的に使う市場を作れるのか。
運用データを価値へ変える基盤を作れるのか。
国産技術を生み出した企業が、生き残れる産業を作れるのか。
今週はこのテーマで書きました。
“A Spring That Came Too Late:
Japan Embraced Agricultural Drones, but Lost One of Its Pioneers”
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