遺体の血管に潜む白い異物──熟練の技師たちが初めて見た光景
2020年を境に、遺体防腐の現場で異変が報告され始めた。血管の中に、長く伸びたゴムのように頑丈な白い繊維状の塊が出現するようになったのだ。数十年の経験を持つ熟練のエンバーマーたちが、かつて見たことのないものだと口を揃えた。
私たち研究チームは、この現場の声を検証するため、2022年から2025年にかけて、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの5か国で働く現役エンバーマーを対象に、4回にわたる匿名のオンライン調査を実施した。合計808名から回答を得ることができた。
調査の結果は驚くべきものだった。各年の調査で、回答者の66%から83%が「異常な白い繊維構造物を観察した」と答えたのだ。さらに、扱った遺体のうち、そうした構造物が含まれていた割合は、加重平均で19%から27%にのぼった。およそ4~5体に1体の遺体で見つかっている計算になる。
エンバーマーたちの証言は具体的かつ一貫していた。その塊は、ときに数十センチにも達し、血管の内腔にぴったりと張り付くように存在する。色は白またはオフホワイトで、質感は弾力があり、ちぎれにくく、イカやミミズに例える者もいた。通常の死後凝血とは明らかに異なるという。古典的な「鶏脂凝血」や「カシスゼリー凝血」は、もろくて黄色や暗赤色を呈し、血管壁に付着しない。ところが、この白い塊は血管を塞ぎ、防腐液の注入を著しく阻害していた。
事態の深刻さに気づいたきっかけは、2022年秋、オハイオ州エンバーマーズ協会の大会だった。出席者の大半が同様の異常を経験していたと知り、協会副会長のウッディ・ウィルソン氏も自身の葬儀社で実際に観察した写真を提供してくれた。現場の最前線にいるプロたちが、同じ時期に同じ異変に気づいていたのだ。
ここで読者の前提を覆す数字を提示したい。2022年の調査で、この構造物を初めて見た年を尋ねたところ、2018年や2019年と答えた人はわずか14~17%だった。ところが2020年になると37%に跳ね上がり、2021年には80%に達したのである。パンデミックの拡大とほぼ軌を一にする、この急激な増加を偶然と片付けることは難しい。
もっとも、ここでひとつ明確にしなければならない。この報告は因果関係を示すものではない。エンバーマーによる観察は、あくまで防腐処理の過程で得られた目視情報だ。ホルムアルデヒドによるタンパク質の固定や、使用される薬剤が塊の見た目を変えている可能性も否定できない。また、メディア報道による認知の広がりが、報告数の増加に影響した面はあるだろう。
しかし、それでも現場の熟練者たちは「これまでとは何かが違う」と強調する。彼らは毎日のように血管の中を観察し、通常の凝血とそうでないものを見分ける目を持っている。実際、アラバマ州のエンバーマー、リチャード・ハーシュマン氏が提供した写真には、長く引き伸ばされた繊維状の鋳型が生々しく写っていた。それは、従来の病理学の教科書に載っているどの死後凝血とも似ていなかった。
この異変が意味するものは、まだ科学的に解明されていない。新型コロナウイルス感染症が引き起こす過凝固状態や、線維素溶解系の異常との関連を指摘する声もあるが、推測の域を出ない。私たちが強調したいのは、経験豊富な観察者の報告は、それ自体がひとつの「安全シグナル」として機能するという事実だ。未知の健康リスクの芽を早期に察知するには、現場の声を軽視してはならない。
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研究論文 『Self-Reported Observations of Unusual White Fibrous Structures in Embalmed Corpses: Multi-Year Survey Results from Embalmers in Five Countries, 2022–2025』(遺体防腐処理された死体における異常な白い繊維構造物の自己報告観察:5か国のエンバーマーを対象とした複数年調査結果、2022~2025年)2026年
著者:Thomas F. Haviland(退役空軍少佐、データアナリスト、数学者), Laura Kasner(調査方法論専門家), Daniel Santiago(薬学博士)
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