皆さんこんにちは!オタク医師VTuberの山吹オルカです。毎年夏になると必ず聞く「熱中症」。でも「そもそも熱中症って何?」と聞かれると、意外とうまく説明できない人も多いんじゃないでしょうか。ものすごくざっくり言うと、熱中症とは「暑い環境にいるとき、あるいは暑い環境にいたあとに起こる体調不良」のこと[1]です。めちゃくちゃシンプルですよね。
まず大前提として、人間の体にはエアコンがついています。汗です。汗が蒸発するときに、体の熱を持っていってくれる。これを「気化熱」と言います。プールから上がったとき、風が吹くとめちゃくちゃ寒いですよね。あれです。
熱中症は、このエアコンをめぐって2つのことが起きている状態です。ひとつは脱水。汗をかけばかくほど、水分と塩分が失われて、体がうまく働けなくなります。もうひとつは、熱そのものによるダメージ。汗で冷やしきれないと、体の中に熱がたまっていきます。
軽いうちは脱水の影響が中心ですが、重症になると、たまった熱そのものが脳や臓器を傷つけるようになります。[3]
昔は「熱失神」「熱けいれん」「熱疲労」「熱射病」など、症状ごとに別々の名前で呼ばれていました。ただ実際には、これらは別々の病気ではなく、軽い状態から重い状態まで地続きにつながっています。なので今はまとめて「熱中症」と呼び、重症度で分けています。[2]
その重症度は、I度からIV度の4段階です。
I度は、めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の汗、こむら返り。意識ははっきりしています。涼しい場所で休んで水分と塩分をとれば、その場で対応できるレベルです。
II度は、頭痛、吐き気、だるさ、ぐったりする、集中力や判断力が落ちる。こうなったら病院に来てください。
III度は、受け答えがおかしい、けいれん、まっすぐ歩けない、さらに肝臓や腎臓がダメージを受けはじめる。入院が必要なレベルです。[1]
そしてIV度。これは最重症で、体の奥の温度が40℃以上あって、しかも意識に障害がある状態。1分1秒を争います。[2]
ただ、皆さんが「これは何度だ」と見分ける必要はまったくありません。覚えて帰ってほしいのは「意識がおかしかったら、もう命に関わるレベル」。ここだけです。軽症なら亡くなることは少ないのですが、重症は本当に危ない。だから早めに気づいて、早めに対応することが大切なんです。
では、どうやって予防すればいいのか。ものすごく身も蓋もないことを言いますが、一番いいのは「暑い環境にいないこと」です。もう、本当にこれが最強です。[3]
じゃあ、どのくらい暑い日が危ないのか。実は、熱中症のリスクは気温だけでは決まりません。効いてくるのは湿度です。さっき、汗が蒸発する気化熱で体を冷やしていると言いましたよね。湿度が高いと、その汗が蒸発しない。体内エアコンが効かなくなるんです。ほかに直射日光や運動の強さも効きます。
そこで使うのが「暑さ指数」、WBGTという数字。気温・湿度・輻射熱から計算するもので、単位は同じ「度」でも気温とは別物です。計算上、気温そのものの重みは1割ほど。湿度のほうがずっと効きます。[4]
そして、この暑さ指数が高い日に出るのが「熱中症警戒アラート」。お住まいの地域に出ていたら、暑さから身を守る行動を。運動は原則中止レベルです。さらに上が「熱中症特別警戒アラート」。過去に例のない危険な暑さという意味なので、全力で命を守る行動をとってください。天気予報のほか、環境省のサイトやLINEで確認できます。[4]
屋内にいられるなら屋内にいて、エアコンを使うのが一番です。ちなみに皆さん、エアコンの設定温度は何℃にしてますか?環境省は、冷房時の「室温」28℃で快適に過ごせる軽装への取組を促すライフスタイル「クールビズ」を推進していますよね。この「28℃」という数字だけが有名になって、「28℃にしておけば熱中症対策になる」と考える人もいるようです[5]。でもここ、間違いが2つあります。
ひとつめ。クールビズが言っているのは「室温28℃」であって、「設定温度28℃」ではありません。全然違います。日当たりや部屋の広さしだいで、設定28℃でも室温は31℃、なんてことが普通に起きます。なので、部屋に温度計を置いてください。リモコンの数字ではなく実際の室温を見る。ここがスタートラインです。
ふたつめ。そもそも室温28℃では、熱中症の予防に不十分だと複数の研究が示しています[6][7]。オルカのおすすめは「室温が26℃になるようにエアコンを使う」。思ったよりしっかり使うのが大事なんですね。
屋外に出るなら、暑い時間帯を避ける、涼しい服装、そして日傘。直射日光を遮るのは、体に入ってくる熱そのものを減らすということ。理にかなっています。男性もぜひ。命のほうが大事です。
そして夏になると出てくる、いろいろな冷感グッズ。ネックリング、ミスト、ハンディファンは、使い方や環境によっては有効です。ただし万能ではありません。ミストやハンディファンは気化熱を使うグッズなので、さっきの理屈どおり、湿度の高い日には効果が落ちます。ネックリングも、ぬるくなれば冷却効果はかなり弱くなります。
一方、メントール系の冷感スプレーや、おでこに貼る冷却シート。「気持ちいい」という意味では全然いいんですが、体を実際に冷やす力はほとんどありません。メントールは、皮膚にある「冷たさを感じるセンサー」に嘘の信号を送っているだけなんです。涼しい感じはするけれど、体は冷えていない。[8]「涼しい気がすること」と「実際に体が冷えていること」は別。むしろ涼しい気がするぶん、暑い場所に居続けてしまうリスクもあります。
あと、飲みもの系の対策もまとめておきましょう。塩タブレットは、大量に汗をかいたときの塩分補給に使います。ただし水分そのものは補えないので、必ず水やお茶と一緒に。スポーツドリンクは、水分・塩分・糖分をまとめて補えるので、運動中や屋外作業中の予防に向いています。そして経口補水液。これはすでに脱水があるときの対処用で、普段から予防目的でゴクゴク飲むものではありません。[10]
では実際に、「これ、熱中症かも?」と思ったらどうするか。まず、涼しい場所へ移動してください。できればエアコンの効いた室内が理想です。次に、服をゆるめて体を冷やします。[1]
冷やし方にもコツがあります。氷まくらで首、脇の下、脚の付け根を冷やす方法が有名ですよね。でも実は、そこにこだわらず全身を冷やしたほうが体温は下がりやすいんです。[9] 手のひらを冷やすのも有効。[1] 体に水をかけて風を当てるのもいい。まさに気化熱で、全身が汗をかいている状態を作ってあげるわけです。[3] 一番効くのは氷水のプールにドボンですが、ハードルが高いですね。[2]
そして、水分と塩分を補給する。ただし、意識がはっきりしていて自分で安全に飲める場合だけです。ぼんやりしている人に無理やり水を飲ませると、気管に入ってしまう「誤嚥」の危険があります。絶対にやめてください。[1]
ちなみに病院の治療も考え方は同じで、とにかく冷やす。つまり現場でやる「涼しいところで体を冷やす」は、熱中症治療そのものの第一歩。やる価値がめちゃくちゃあります。
そして最後に、これは絶対に覚えておいてください。受け答えがおかしい。自分で水分を飲めない。けいれんしている。このどれかがあれば、様子を見ずに119番してください。ここは「もうちょっと待ってみようかな」と悩むところではありません。
はい、というわけで今回は熱中症についてお話ししました。予防で一番大事なのは、そもそも暑い環境を避けること。危ないかどうかは気温ではなく暑さ指数とアラートで判断。エアコンは設定温度ではなく室温で26℃、温度計を置きましょう。冷感グッズは「涼しい気がすること」と「実際に体が冷えること」を分けて考える。もし疑われたら、涼しい場所へ移動して、体を冷やして、飲めるなら水分と塩分を。そして受け答えがおかしい、水分を飲めない、けいれんしている。このどれかがあれば、迷わず119番。
これだけ覚えて帰ってもらえれば、今回の動画を見た元は十分取れてるんじゃないでしょうか。暑い日は無理しないのが一番です。エアコンをつけて、水分をとって、なんとか無事に夏を乗り越えましょう。
というわけで、今回の動画が参考になったら、チャンネル登録と高評価もよろしくお願いします。それでは、また次の動画でお会いしましょう。山吹オルカでした!またね~
参考文献
[1] Eifling KP, Gaudio FG, Dumke C, Lipman GS, Otten EM, Martin AD, Grissom CK. Wilderness Medical Society Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Treatment of Heat Illness: 2024 Update. Wilderness Environ Med. 2024 Mar;35(1_suppl):112S-127S. doi: 10.1177/10806032241227924. PMID: 38425235.
[2] 日本救急医学会. 熱中症診療ガイドライン2015・2024.
[3] Sorensen C, Hess J. Treatment and Prevention of Heat-Related Illness. N Engl J Med. 2022 Oct 13;387(15):1404-1413. doi: 10.1056/NEJMcp2210623. PMID: 36170473.
[4] 環境省. 熱中症予防情報サイト(暑さ指数(WBGT)・熱中症警戒アラート/熱中症特別警戒アラート). https://t.co/9B0vpZXL8D(2026年7月16日閲覧)
[5] 環境省. 熱中症を防ぐためには(熱中症環境保健マニュアル). https://t.co/JG0g6pA1gS
[6] Meade RD, Akerman AP, Notley SR, Kirby NV, Sigal RJ, Kenny GP. Effects of Daylong Exposure to Indoor Overheating on Thermal and Cardiovascular Strain in Older Adults: A Randomized Crossover Trial. Environ Health Perspect. 2024 Feb;132(2):27003. doi: 10.1289/EHP13159. Epub 2024 Feb 8. PMID: 38329752; PMCID: PMC10852046.
[7] Tham S, Thompson R, Landeg O, Murray KA, Waite T. Indoor temperature and health: a global systematic review. Public Health. 2020 Feb;179:9-17. doi: 10.1016/j.puhe.2019.09.005. Epub 2019 Nov 8. PMID: 31707154.
[8] Rosales AM, Walters MJ, McGlynn ML, Collins CW, Slivka DR. Influence of topical menthol gel on thermoregulation and perception while walking in the heat. Eur J Appl Physiol. 2024 Jan;124(1):317-327. doi: 10.1007/s00421-023-05279-0. Epub 2023 Jul 28. PMID: 37505231.
[9] Hewett Brumberg EK, Douma MJ, Alibertis K, et al; on behalf of the American Heart Association and American Red Cross. 2024 American Heart Association and American Red Cross Guidelines for First Aid. Circulation. 2024;150(24):e519-e579. doi: 10.1161/CIR.0000000000001281. PMID: 39540278.
[10] 消費者庁. 経口補水液(けいこうほすいえき)について. https://t.co/RaDHRdqntD (2026年7月17日閲覧)