時系列分析のバックテストでリークがないようにホールドアウト期間をセットアップすることができれば、それはフォワードテストと論理的には等値ではないだろうか。
もちろんフォワードテストには論理的、認識論的な話だけでなく、実務上の側面などもあるからそれ自体は必要なのだが。
とするとやはり重要なのは仮説の発見と仮説の検証、つまりバリデーションだ。実際かなり良い数字が出てきている。フォワードテストはまだ途上だが、今のところバックテストから外れるような数字は出てきていない。
ここで日本の統計学者赤池弘次先生がおっしゃっていたが、やはり時系列分析や回帰分析などを考える際にはロナルド・フィッシャーの尤度(likelihood)に基づいた仮説検証(hypothesis testing)と推定(estimation)という区分は意味をなさなくなるし、さらにいうならハンス・ライヘンバッハ以降の科学哲学の伝統である仮説の発見と仮説の検証という区分自体意味をなさなくなる。
だからこそアブダクション(最良説明への推論、Inference to the best explanation, or IBE)が必要になってくる。ここも赤池先生の仰った通り。
🔥翻訳するとわからなくなる感覚
『認知科学でネイティブ感覚の英語脳をつくる』のなかで、翻訳すれば同じだが、ニュアンスが(かなり)異なるものということで、以下のものを例として出した。
I find her intelligent.
I find that she is intelligent.
上は自分が直接見て自分の感覚としてそう思った、という感じで、下は直接ではなく様々な要因から判断したというニュアンスになる。
🔥「なぜ」に対する説明
そして本のなかでは「なぜ」そのような違いが生じてくるのかという説明もした。この「なぜ」に対する説明が『認知科学でネイティブ感覚の英語脳をつくる』の最重要部分(モデルの中核)だ。
本の中でも書いたのだが、「その英語、ネイティブはこう感じる」というような説明(❓)をネイティブでない人間にされても、そもそもネイティブの感覚がないのだから、それでは丸暗記に逆戻りだ。実際、感覚を説明するというのは、自転車に乗ったことがない人に自転車の乗り方を説明するようなもので、ほとんど意味をなさない。
だから効率的に英語を学ぶには「なぜ」に対する説明が必要になる。「なぜ」なのかが分かれば、それは意味のない丸暗記ではない本当の学習だ。学習した内容を新しい状況にも一般化できる。
🔥モデル
もちろんこのような「なぜ」という説明はモデルであり、実際にはニュアンスはかなりオーバーラップする場合もあるだろうし、必ずしも全ての人(ネイティブ)は上記の通りに感じないかもしれない。本来、テクスト(文章)はコンテクスト(文脈)から切り離せないから、様々な状況により、ニュアンスは異なる。
しかしそれがモデルの強さで、モデルは本来そういったものなのだ。全てのデータを通る回帰線などはオーバーフィッティング(過去のデータを丸暗記)しただけの「意味」のわからない回帰線であり、新しい予測をすることができない。
良い回帰線はほとんど全てのデータを通らず、データとモデルの間に残差(residual error)が存在するように、(物理学ならいざ知らず)モデルは全てを完全に説明しない。しかしそこには例外もあるが「親の身長が高ければ、一般的に言って子どもの身長も高い」などといった意味のあるパターンが立ち現れてきて、完璧ではないにしても新しいデータを予測することができる。回帰分析(モデル)の役割は一人一人の身長を全て説明することではない。
だからこそ必ずしも英語の説明にも上記の通りに感じないかもしれない状況が出てくることになる。教科書ではこう習ったけど、ネイティブに聞いてみたら、あまり差がないと言われた、というようなのはこのモデルとデータの残差のことが多々ある。
🔥モデルの役割
モデルは実際の全て(actual sequence)を全て記述、説明するのではなくて、おおまかな、それでいて汎用性のある(一般化できる)意味のあるプロセス(robust process)の説明でなければならない。
一見すると全てを説明できるモデルの方が良いと思うかもしれないが、そしてそれが従来の英語教育がやってきたこと(文法、用法、表現の羅列)なのだが、やはりそれは間違いだと思う。だからこそ「to不定詞の何とか用法」などといった意味のない羅列を丸暗記しなければならない羽目に陥る。
🔥新しい例
ただ、例が少しわかりにくいかなと思い、色々考えていたら、新しい例を思いついた。
I heard somebody scream.
I heard that somebody screamed.
この場合、最初は自分が直接聞いている。後者だとそういった話を後から報告を受けた印象が強い。そして「なぜ」このような違いが生じてくるのかは認知科学による英語モデルが少しだけ分かればすぐに理解できる。
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