【「第二次大戦の同盟国・中国」とは誰だったのか――米中ファクトシートを読む】 JVL | 9.26
ホワイトハウスが9月25日に公表した米中首脳会談のファクトシートには、貿易・投資委員会の本格稼働、双方300億ドル規模の非機微品目に対する関税優遇の勧告、中国による米国産石炭購入、レアアース協議、フェンタニル対策、米中「Super Intelligence」対話の設置などが盛り込まれた。
しかし、日本にとって最も興味深い一文は別にある。
“The two leaders recalled that United States and China were allies in World War II and fought side by side to win the war.”
「米国と中国は第二次世界大戦で同盟国であり、肩を並べて戦い、戦争に勝利した」と、米政府の公式文書に明記されたのである。
これに対し、日本では「当時、米国の同盟国だったのは中華人民共和国ではなく、中華民国だった」との指摘が相次いでいる。
確かに、第二次世界大戦期、国際的に「中国」を代表していた政府は、蒋介石率いる中華民国国民政府だった。
したがって、「米国と中華人民共和国が第二次大戦の同盟国だった」と書けば、それは誤りである。中華人民共和国は1949年に成立したからだ。
しかし、「米国と中国が第二次大戦の同盟国だった」という表現は、国際的な第二次大戦史の叙述として異例ではない。
ここに1949年以後の「中国代表権」の問題が入ってくる。
1949年以後、北京の中華人民共和国政府と台湾に移った中華民国政府は、ともに自らこそ「中国」を代表すると主張した、1971年、国連総会決議2758によって、国連における「中国」の代表は台北から北京へ移った。
そして1979年、米国も中華人民共和国政府を「中国の唯一の合法政府」と承認し、中華民国政府を「中国政府」として承認する政策を終了した。
国際制度上起きたことは、「昔の中国が消滅して、別の中国が新しく国連に加盟した」ということではない。
国連安全保障理事会の「中国」の席も、新しく一議席追加されたわけではない。誰がその「中国」を代表するのかが、台北から北京へ変更されたのである。
この意味で、1945年の「中国」と2026年の「中国」を国家史として連続的に語ることには、国際制度上の根拠がある。
しかも日本自身、1972年の日中共同声明で、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と明記している。台湾については北京の立場を「十分理解し、尊重する」という別の表現を採用しており、ここも区別が必要だが、日本も外交上、北京政府を現在「中国」を代表する政府として扱っている。
だから今回、日本が本当に注目すべき点は、「1945年の中国はROCだった」という事実確認だけではないだろう。
より重要なのは、2026年の米国政府が、習近平国家主席を国賓として迎えた公式文書の中で、あえて「United States and China were allies in World War II」という歴史的連続性を持つ表現を選んだことである。
中国が抗日戦争の歴史を外交的に利用すること自体は新しくない。しかし、米国大統領とホワイトハウスまで「米中は第二次大戦の同盟国だった」という歴史を公式に共有すれば、それはもはや中国国内だけの歴史ナラティブではなくなる。
米国がなぜ今、この歴史を中国との外交資源として再び使用し始めたのか。
歴史認識は過去についての議論であると同時に、現在の国際秩序で誰がどの位置に立つのかをめぐる政治でもある。
今回のファクトシートが日本に投げかけている問題は、そこにあるのではないか。
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