獣医の世界では半世紀前から常識だ。脊髄を損傷し、四肢が完全に麻痺した犬や馬にDMSOを点滴すると、彼らは再び立ち上がり歩き出す。ところが、同じ怪我を負った人間には「もう手の施しようがありません」と宣告される。この埋めがたい落差こそが、今回掘り起こす「忘れられた医療」の核心だ。
DMSOは、細胞の骨格とも言える「微小管」の再構築を劇的に促進する。神経細胞はこの骨格が壊れると再生できないが、DMSOはその組み立てに必要なタンパク質濃度を10分の1近くまで下げ、傷ついた神経回路の再接続を後押しする。さらに幹細胞を神経細胞へと分化させる作用も持ち、失われた組織そのものを補う可能性を秘めている。
1970年代、スタンリー・ジェイコブ博士らは、脊髄損傷から数時間以内にDMSOを点滴された患者が歩行を取り戻した事例を報告した。うち一人は受傷から9時間後という「手遅れ」のタイミングだったにもかかわらず、である。
慢性の腰痛や坐骨神経痛、椎間板ヘルニアに対しても、DMSOの効能は軽視できない。ロシアでの偽薬対照試験では、DMSOゲルを1日2回塗った患者群の痛みの指標が10点満点中7.46点から2.58点へと大幅に改善し、筋肉の緊張や脊椎の可動域でも偽薬群を明らかに上回った。
私のもとには、何十年も背部痛に苦しみ、複数の手術にも失敗した読者から「DMSOで人生が変わった」という声が数百件寄せられている。ある男性は、12.5mmも飛び出していた椎間板が数ヶ月の塗布で3〜4mmに縮小し、メスを入れずに済んだという。
話はここで終わらない。本当に問うべきは、獣医が当たり前に使う治療法を、なぜ人間の医療だけが無視し続けるのか、という構造的な問題だ。
答えの一端は、DMSOが安価で特許を取れない物質である点に潜む。莫大な利益を生む新薬の市場を侵食する可能性があるため、大規模な人間での臨床試験には莫大な資金が必要なのに、誰もその費用を出そうとしないのだ。FDA(米国食品医薬品局)による規制の壁も厚く、動物では「奇跡的」とされる回復のデータが積み上がっても、人間への応用は半世紀近く棚上げされたままだ。
飼い主にとって家族同然の犬が交通事故で麻痺した時、獣医は迷わずDMSOの点滴を選ぶ。その事実を知りながら、自分の親が転倒して脊髄を損傷した場合に同じ選択肢を与えられないとしたら、それは科学の問題ではなく、もはや医療制度の倫理的な不作為と言わざるを得ない。
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A Midwestern Doctor(中西部の医師)
記事『The Forgotten Side of Medicine: How DMSO Heals the Spine and Reverses Paralysis』(忘れられた医療:DMSOはいかにして脊椎を癒し、麻痺を回復させるか)