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TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
3〜5分で読める、大人のショートストーリー。 恋愛、夫婦、仕事、人間の本音。 笑ったり、少し切なくなったり。 見つけてくれて、本当にありがとう。 読んでくれるあなたが、次の物語を生む力です。 どうぞ、楽しんでいってください! 毎日18:15更新。 小説から声へ、映像へ。 もっと面白い世界を、みんなと一緒に。 TIAIM
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TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
7 days ago
はじめまして、TIAIMINIです。 私たちは、小さな物語をつくります。 恋をした人。 嘘をついた人。 誰にも言えない秘密を持つ人。 家族を愛している人。 それでも、誰かを傷つけてしまった人。 ここでは、そんな人間たちの 短いフィクションを届けます。 小説から、声へ。 声から、映像へ。 TIAIMINI
TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
about 5 hours ago
ドン。 深夜二時。 隣の部屋から、何かを叩く音がした。 ドン。ドン。 まただ。 俺は布団の中で目を開けた。 このアパートに越してきて三日目。 隣の住人とは、まだ顔を合わせていない。 ズズズズ……。 今度は、重いものを床に引きずる音。 ドサッ。 何かが倒れた。 しばらく静かになった。 ポタッ。 ポタッ。ポタッ。 水の落ちるような音がする。 俺は壁に耳を近づけた。 「……やめて」 女の声だった。 心臓が跳ねた。 「お願い……」 ドン! 俺は飛びのいた。 警察を呼ぶべきか。 でも、ただの夫婦喧嘩だったら? スマホを握りしめたまま、十分ほど過ぎた。 やがて、隣の部屋のドアが開いた。 ギィ……。 コツ。コツ。コツ。 廊下を歩く足音。 俺は玄関のドアスコープをのぞいた。 誰もいない。 コツ。コツ。 足音は、俺の部屋の前で止まった。 しん……。 息を殺した。 コン。 玄関のドアが、小さく鳴った。 コン。コン。 誰かがノックしている。 「……どなたですか?」 返事はない。 代わりに、ドアの下から一枚の紙が滑り込んできた。 カサッ。 震える手で拾い上げる。 そこには、赤い文字でこう書かれていた。 『壁に耳をつけないで』 俺は思わず壁を見た。 トン。 壁の向こうから、小さな音がした。 さっき耳をつけていた場所だった。 「……やっと、こっちを向いた」 女の声。 俺は壁���ら後ずさった。 その瞬間、隣の部屋の物音が、すべて止まった。 しん……。 静かすぎる。 自分の呼吸だけが聞こえる。 ドン。 俺は身体を震わせた。 今の���は、隣じゃない。 ドン。ドン。 俺の部屋だ。 ズズズズ……。 何かを引きずる音。 ベッドの下から聞こえてくる。 俺は動けなかった。 ドサッ。 ベッドの下で、何かが倒れた。 そんなはずはない。 あそこには、何も置いていない。 ポタッ。 ポタッ。ポタッ。 水の落ちる音。 今度は、俺のすぐ後ろからだった。 俺は動けなかった。 しん……。 さっきの言葉が脳裏をよぎる。 「……やっと、こっちを向いた」 そのまま俺は、振り返れなかった。 SHORT STORY #007|FICTION 『隣の部屋』 ーTIAIMINI
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TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
about 9 hours ago
人生に行き詰まったとき、選択肢は二つある。 一つは、待つこと。 好きなものを読んだり、観たりして、 心を休めながら、周囲が変わるのを待つ。 楽かもしれない。 でも、少しずつ孤独になっていく。 もう一つは、進むこと。 自分から動くのは、苦しいかもしれない。 でも、動き出した人には、 手を差し伸べてくれる人が現れることもある。 待てば、周囲が変わるかもしれない。 進めば、自分と周囲が変わり始める。
TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
1 day ago
ある町の古い食料品店に、小さなネズミが住んでいた。 名前はチロ。 チロには三匹の仲間がいた。 毎晩、店が閉まると、みんなで食べ物を探しに出かけた。 パンくずが見つかれば四つに分けた。 クッキーが見つかれば、誰が一番大きなかけらをもらうかで大騒ぎになった。 お腹がいっぱいにならない夜もあったけれど、いつも笑い声が絶えなかった。 ある晩、チロは倉庫の奥で、とんでもないものを見つけた。 大きな、大きなチーズだった。 チロの身体の何十倍もある。 近づくだけで、甘く濃厚な香りがした。 「すごいや!��みんなを呼んでこよう!」 チロは走り出しかけた。 でも、途中で足を止めた。 もし、これが全部、自分のものだったら? 毎晩、食べ物を探し回らなくてもいい。 誰かと分ける必要もない。 お腹がすいたら、好きなだけ食べられる。 チロは振り返り、チーズを見つめた。 「……明日、教えればいいや」 その夜、チロは仲間のところへ戻らなかった。 翌晩も、その次の晩も。 チロは少しずつチーズを削り、自分の巣へ運び続けた。 「チロ、今夜も一緒に行こうよ!」 仲間が誘いに来た。 「ごめん、今日は忙しいんだ」 「何してるの?」 「ちょっとね」 チロは巣の入り口を身体で隠した。 また別の夜、仲間がクッキーのかけらを持ってきてくれた。 「これ、チロの分だよ」 「いらないよ。お腹いっぱいだから」 「えっ、何を食べたの?」 「……いろいろ」 仲間は不思議そうな顔をして帰っていった。 それから、誘いに来る回数が減った。 チロは少し寂しくなったけれど、チーズを見るとすぐに忘れた。 もっと運ばなきゃ。 まだまだ、こんなにあるんだから。 やがて巣の中は、チーズでいっぱいになった。 寝床の周りにも、通り道にも、天井近くまで積み上がっている。 チロはその真ん中に座って、満足そうに笑った。 「これで、一生食べ物には困らないぞ」 ところが、数日後。 チーズの端に、小さな青い点ができていた。 カビだった。 翌日には、青い点がいくつも増えていた。 チロは慌てて食べ始めた。 でも、食べても食べても、チーズは減らない。 お腹が苦しくなっても、まだ山のように残っている。 やがて、巣の中に嫌な臭いが漂い始めた。 チロはチーズの山を見上げた。 こんなにたくさんあるのに。 こんなに頑張って集めたのに。 そのとき、壁の向こうから笑い声が聞こえた。 三匹の仲間たちの声だった。 チロはそっと壁の隙間をのぞいた。 みんなは小さなパンくずを分け合って、楽しそうに食べていた。 チロは自分の巣に積み上げたチーズを見つ���る。 世界で一番大きなチーズを手に入れた。 でも、世界で一番小さな食卓になってしまった。 SHORT STORY #006|FICTION 『世界で一番大きなチーズ』 ーTIAIMINI
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TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
3 days ago
最近、妻の様子がおかしい。 スマホを見ては笑い、俺が近づくと慌てて画面を伏せる。 結婚十五年。まさか、妻に限って�� そう思いながら、俺は興信所のドアを開けた。 「奥様の浮気調査ですね」 「はい。できれば、何も出てこないことを祈っています」 一週間後、報告書が届いた。 妻は平日の午後、初老の男性と待ち合わせ、二人で買い物をしていた。 添付された写真には、男の腕に手を添え、親しげに歩く妻が写っていた。 男は後ろ姿で、顔が見えない。 こんなに近い距離で、知らない男と……。 俺は頭を抱えた。 * 最近、夫の様子がおかしい。 帰宅が遅い。休日にも一人で出かける。 先日、夫の鞄から、小さなアクセサリー店のパンフレットが出てきた。 もしかして、私へのプレゼント? 少し嬉しくなった。 でも、結婚記念日なんて、ここ何年もまともに祝っていない。 それに最近、夫はスマホを見ては、ひとりで笑っている。 まさか、他の女に……。 そう思いながら、私は興信所のドアを開けた。 「ご主人の浮気調査ですね」 「はい。できれば、何も出てこないことを祈っています」 一週間後、報告書が届いた。 夫はアクセサリー店で女性向けの商品を購入。 その後、若い女性と合流し、親しげに会話していた。 添付された写真には、若い女性と笑い合う夫が写っていた。 女性は後ろ姿で、顔が見えない。 私には、最近あんな顔を見せないくせに。 私は報告書を握りしめた。 * その夜、久しぶりに夫婦でレストランに入った。 注文を済ませても、二人とも黙ったままだった。 「話がある」 「私も」 二人は鞄から封筒を取り出した。 「お前、浮気してるだろ!」 「あなた、浮気してるでしょ!」 同時だった。 「この男は誰なんだ!」 夫は写真を突きつけた。 妻は写真をのぞき込み、目を丸くした。 「……お義父さんだけど」 「は?」 「あなたに腕時計を贈りたくて。私、時計のことよく分からないから、お義父さんに相談したの。膝が痛いのに無理して来てくれたから、歩くときに支えてあげてたの」 夫はもう一度写真を見た。 確かに、父がいつも着ている上着だった。 今度は妻が写真を突きつけた。 「じゃあ、この女の人は誰?」 「お前の妹だよ。結婚記念日のプレゼントを相談してたんだ」 「……え?」 妻は写真を見直した。 「そういえば……」 しばらく、二人は顔を見合わせ、吹き出した。 その夜、二人が持ってきた封筒には、同じ興信所の名前が印刷されていた。 互いに知らないまま、同じ会社に浮気調査を依頼していたのだ。 二人分の調査費を合わせれば、結婚記念日にちょっとした旅行ができた。 結婚十五年目。 夫婦が互いに贈った、一番高いプレゼントは、疑惑だった。 SHORT STORY #005|FICTION 『夫婦そろって、調査中』 ーTIAIMINI
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TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
4 days ago
会社を辞めて、17日になる。 妻には、まだ言っていない。 毎朝スーツを着て、 妻の作った弁当を持って家を出る。 夕方には、何食わぬ顔で帰宅する。 最近、俺には日課が一つ増えた。 郵便受けの確認だ。 退職して数日後、会社から封筒が届いた。 妻より先に見つけ、慌てて鞄にしまった。 それから一週間ほどして、もう一通。 これも無事に回収できた。 危なかった。 会社を辞めた理由は、自分でもうまく説明できない。 給料が悪かったわけじゃない。 上司に怒鳴られたこともない。 いわゆる窓際族だ。 仕事はほとんどなく、誰とも話さない。 一日中、時計ばかり見ていた。 俺が休んでも、誰も困らない。 そう思うと、会社にいる時間が たまらなく苦しくなった。 今は毎朝、図書館でパソコンを開き、 求人情報を眺めている。 昼になると、毎日場所を変えて、 近くの公園で妻の弁当を食べる。 周りには、スマホをいじるサラリーマンたち。 少し離れた喫煙所から、電子たばこの煙が漂ってくる。 昼休みが終わると、一人、また一人と立ち上がっていく。 俺には、戻る場所がない。 それでも、妻の卵焼きはいつもどおり甘かった。 午後はカフェに移って、また求人票を見る。 混み合った店内では、誰も俺のことを気にしない。 会社でも同じだった。 ただ、求人欄を見るたびに胸が重くなる。 これからの生活。妻への申し訳なさ。 考えても、答えは出ない。 ある朝、妻がいつものように弁当を差し出した。 「ねえ、今日はどこで食べるの?」 一瞬���思考が固まった。 「……会社だけど」 「そう」 妻はテーブルの上に封筒を置いた。 「会社から、もう一通届いてたよ」 「…………」 もう一通……。 妻は何も聞かなかった。 そして、 「うちで食べてもいいよ」 俺は���事ができなかった。 「それか、私の会社の近くの公園に来る? お昼、一緒に食べようよ」 しばらく黙ってから、俺は小さくうなずいた。 その日の昼、妻の職場の近くの公園で、 二人で弁当を広げた。 「あれ、木村さん、こちらご主人さん?」 顔を上げると、知らない女性が立っていた。 「初めまして〜! ケイです! あ、木村さん聞いて! 昨日うちの猫がさ、夜中に突然走り回って! もう大変だったの! しかもね……」 ケイと名乗る女性は、一方的に猫の話を続けた。 「あ、もう戻らなきゃ! じゃあ、またあとでね〜! おじゃましました〜!」 そう言って、慌ただしく去っていった。 「……誰?」 「ケイちゃん。いつも一緒にお昼食べてるの。 今日はマー君と食べるって言ったから、 たぶん偵察に来たんだよ」 「楽しそうな人だね」 「ひとりでずっとしゃべってるよ」 妻は笑った。 俺も、つられて笑ってしまった。 次の仕事は、まだ決まっていない。何かが解決したわけじゃない。 それでも。 平日の昼ご飯が、こんなに楽しいものだと久しぶりに感じた。 SHORT STORY #004|FICTION 『退職したことを、妻は知らない』 ーTIAIMINI
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TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
5 days ago
上司の悪口を、上司本人に送ってしまった。 「あのハゲ、マジで使えねえ」 送信した瞬間、血の気が引いた。 画面の上には、課長の名前があった。 慌てて送信を取り消そうとした。 既読。 終わった。 帰宅途中の電車の中だった。 何度もLINEを開いた。 課長からの返信はない。 今日の会議でもそうだった。 現場の事情を何も知らないくせに、 「もっと工夫できないの?」と偉そうに言う。 腹が立って、同僚の田中に愚痴を送るつもりだった。 それを、本人に送ってしまった。 よりによって、ハゲとまで書いて。 翌朝、課長はいつも通り「おはよう」と言った。 もちろん、課長の頭頂部は今日も薄い。 思わずそこに目がいってしまった。 まずい。 今、頭を見たのもバレた���じゃないか。 「お、おはようございます」 声が少しうわずった。 課長は何事もなかったように自分の席に座った。 怒っている様子はない。 いや、怒っていないはずがない。 あんなLINEを読んで、平気な人間がいるだろうか。 九時半。何も言われない。 十時。何も言われない。 十時半。 課長が俺の席に近づいてきた。 心臓が跳ねた。 「昨日の件だけどさ」 来た。 「先方には確認取れた?」 仕事の話だった。 「あ、はい。取れてます」 「じゃあ、よろしく」 課長は立ち去っていった。 なんなんだ。 読んでないのか? いや、既読はついた。 もしかして、取り消す前に開いたけど、 文章までは見ていない? そんな都合のいいことがあるか。 昼休み。 ようやく田中をつかまえた。 「昨日さ、課長に、おまえと間違えてLINE送っちゃってさ」 「何て?」 「……あのハゲ、マジで使えねえって」 田中が吹き出した。 「ハハハ! おまえ、マジかよ!」 「声でかいって!」 「で? 何か言われた?」 「それが、何も言われないんだよ」 「既読は?」 「��いた」 「うわ、最悪じゃん!」 田中はまた笑った。 「笑い事じゃねえんだよ。朝からずっと気が気じゃなくて」 「でもさ、取り消したんだろ?」 「うん」 「じゃあ、読んでない可能性もあるんじゃね?」 「そう思う?」 「いや、知らんけど」 田中は笑いをこらえながら言った。 「でも、何も言われないなら大丈夫じゃね?」 「そうかな」 「案外、気にしてないのかもよ」 少しだけ気が楽になった。 午後三時。 課長が資料を持ってきた。 「悪いんだけど、これ、今日中に直してもらえる?」 見覚えのある資料だった。 先週、俺が三日かけて作った提案書だ。 「え、これですか?」 「うん。ちょっと構成を変えたいんだよね」 「どのあたりを?」 「全体的に」 全体的に? 「もう少し、こう、パッと見て分かる感じにできないかな」 出た。 いつもの、具体性ゼロの指示。 「今日中……ですか?」 「うん。明日の朝、使いたいから」 普段なら、もう少し具体的に指示してくれと言い返していた。 でも、今日は違う。 「……分かりました」 「助かるよ。よろしく」 課長はにこやかに去っていった。 これ、絶対わざとだろ。 いや、待て。 いつもこんな感じだった気もする。 午後七時。 ようやく資料が完成した。 課長の席へ持っていく。 「できました」 「お、ありがとう」 課長��ページをめくりながら、何度かうなずいた。 「うん、いいね。すごく分かりやすくなった」 「ありがとうございます」 課長は何度もうなずきながら、資料をめくった。 いつもなら、その間がじれったい。 でも今日は、妙にソワソワする。 そして、課長はこう言った。 「君は、ほんと……使えるねぇ」 心臓が跳ねた。 使える。 課長はにこにこしている。 俺も笑った。 今日一番ぎこちない笑顔だった。 課長がLINEを読んだのかどうか��結局分からなかった。 帰りの電車でLINEを開いた。 田中宛にこう書いた。 『あのハゲ、マジで怖え。』 SHORT STORY #003|FICTION 『あのハゲ、マジで怖え』 ーTIAIMINI
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TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
6 days ago
妻のLINEを見た。 浮気していたわけじゃない。 男がいたわけでもない。 それなのに、 浮気されるより、きつかった。 見るつもりはなかった。 妻が風呂に入っている間、 テーブルに置かれた妻のスマホが目に入った。 最近��よく誰かとLINEをしている。 誰と、何を話しているんだろう。 ただ、それだけだった。 人のスマホなんて見るもんじゃない。 分かってる。 でも俺は、妻のスマホを手に取った。 ロック番号は知っていた。 子どもの誕生日だった。 LINEを開くと、 妻がその少し前に送った文章があった。 「嫌いじゃないよ。でもなんだろ、もう普通すぎて空気みたいな感じ。いなくなったら寂しいとは思うけど、例えば旦那が死んだとしても、意外と泣かないかも笑」 しばらく、その文字を見ていた。 もう一度読んだ。 「意外と泣かないかも笑」 笑。 なんだよ、それ。 風呂場からシャワーの音がしていた。 俺はスマホを元の場所に戻した。 ちょうど妻が出てきた。 「暑っ」 そう言��ながら冷蔵庫を開けて、 缶ビールをピシュッと開けた。 いつもと同じだった。 俺たちは結婚して十二年になる。 子どもが二人いる。 大きな喧嘩はほとんどしない。 休みの日には家族で出かけるし、 誕生日にはケーキも買う。 妻が体調を崩せば、俺が飯を作る。 俺が遅くなる日は、 妻が晩飯を残してくれている。 仲の悪い夫婦ではないと思う。 むしろ、 仲はいい方だと思っていた。 その夜、妻は先に寝た。 俺も少し遅れて寝室に入った。 妻はいつものように、 俺に背中を向けて寝ていた。 別に珍しいことじゃない。 俺たちはもう何年も、 寝るときに抱き合ったりしない。 十二年も一緒にいれば、 そんなもんだと思っていた。 布団に入って、目を閉じた。 でも眠れなかった。 俺が死んでも、 こいつは泣かないのか。 馬���みたいだと思った。 たかがLINEだ。 女同士の会話なんて、 大げさに言うこともあるだろう。 それに、 「いなくなったら寂しい」 とは書いてあった。 だったらいいじゃないか。 そう思おうとした。 でも、 最後についていた「笑」が、 どうしても頭から消えなかった。 俺は会社では、たぶん強い方だ。 部下がミスをすれば怒る。 面倒な���引先にも、 言うことは言う。 そんな俺が、 妻のLINEひとつで眠れなくなっている。 誰にも言えるわけがなかった。 「嫁が、俺が死んでも泣かないって言ってた」 そんなこと、 友達にも、 同僚にも、 まして妻本人にも言えるわけがない。 次の日の朝。 妻はいつも通り台所に立っていた。 「今日遅い?」 「たぶん」 「晩ご飯どうする?」 「いらないと思う」 「分かった」 それだけだった。 俺は玄関で靴を履いた。 「行ってきます」 「行ってらっしゃい」 ドアノブに手をかけて、 なぜか一度、妻を見た。 「忘れ物?」 妻は無表情で聞いた。 その声が、なんだか冷たく感じた。 それでも俺は、 無性に妻に微笑んでほしかった。 自分から笑いかければいいのに。 でも、できなかった。 「行ってくる」 「うん。行ってらっしゃい」 ドアを閉めた。 駅まで歩きながら、 昨日のLINEをまた思い出した。 俺は妻に、 愛してると言ってほしいわけじゃない。 昔みたいに、 男として見てほしいわけでもない。 ただ、 俺がいなくなったときくらい、 泣いてほしい。 そんなことを考えている自分が、 少し情けなかった。 だから、 誰にも言わないことにした。 妻にも言わない。 たぶん今日も、 家に帰ればいつものおつまみがあって、 くだらないYouTubeを見て、 同じベッドで眠��。 明日も、 明後日も。 俺たちはこれからも、 たぶん普通の夫婦だ。 妻は、俺が死んでも泣かないかもしれない。 その言葉に、 自分がこんなに傷ついていることにも気づいた。 それなのに、 俺は今日も、何もしなかった。 ────────── SHORT STORY #002|FICTION 『浮気より嫌なもの』 — TIAIMINI
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TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
7 days ago
「妻とは、もう三年していない」 彼がそう言ったとき、私は少し安心した。 なぜ��心したのかは、今でも分からない。 たぶん私は、彼の妻から何かを奪う女には なりたくなかったのだ。 もうとっくに、奪い始めていたのに。 ────────── SHORT STORY #001|FICTION 『妻とは、もう三年していない』 ────────── 彼とは仕事で知り合った。 最初に二人で食事をした夜も、 本当に仕事の話しかしていない。 二軒目にも行かなかった。 駅の改札で、 「じゃあ、また月曜日」 そう言って別れた。 それだけだった。 なのに電車に乗った瞬間、 私は彼からのメッセージを待っていた。 三駅過ぎたころ、スマホが震えた。 「今日はありがとう。楽しかった」 たった、それだけ。 私はその文章を家に着くまで何度も読み返した。 玄関を開けると、夫がリビングから言った。 「おかえり。遅��ったね」 「うん。打ち合わせ長引いて」 嘘ではなかった。 だから私は、 まだ何も悪いことをしていないと思った。 それから、ときどき二人で食事をするようになった。 仕事の話。 上司の愚痴。 最近観た映画。 どうでもいい話ばかりだった。 夫とは、いつからこんな話をしなくなったんだろう。 そんなことを考えた夜、 彼が突然言った。 「妻とは、もう三年していない」 私はグラスを置いた。 「そういうこと、私に言わない方がいいですよ」 「なんで?」 冗談っぽく笑って、 私は言った。 「勘違いするから」 彼は笑わなかった。 私も笑えなくなった。 数秒、沈黙した。 たぶん、 あの数秒で全部決まった。 初めて彼とホテルに行った夜。 私は結婚指輪を外した。 彼も外した。 洗面台に二つの指輪が並んだ。 似てもいない指輪なのに、 夫婦のものみたいに見えた。 急に怖くなった。 「……やっぱり帰ろうかな」 彼は引き止めなかった。 「うん」 それだけ言った。 その「うん」が優しくて、 私は帰れなくなった。 半年続いた。 月に一度か二度。 旅行はしない。 プレゼントもしない。 休日には連絡しない。 家族の話もしない。 未来の話は、もっとしない。 私たちはルールを守った。 ルールを守っている間は、 何か大切なものも守れている気がした。 ある日の夕方。 夫からメッセージが届いた。 「今日、早く帰れる?」 珍しかった。 「帰れるよ」 すぐに返信が来た。 「じゃあケーキ買っとく」 なんでケーキ? しばらく考えて、 気づいた。 その日は、 私たちの九回目の結婚記念日だった。 私は忘れていた。 家に帰ると、 夫がスーパーで買った小さなケーキを二つ並べていた。 「九年だって」 そう言って笑った。 苺のショートケーキと、 チョコレートケーキ。 夫は何も聞かず、 苺の方を私の前に置いた。 私がどちらを選ぶか、 九年経っても覚えていた。 「コーヒーでいい?」 「うん」 夫がキッチンへ行った。 私は一人で、 苺の乗ったケーキを見ていた。 そのとき初めて、 自分が何をしているのか分かった。 翌日、彼に別れを告げた。 彼はしばらく黙ってか��聞いた。 「旦那さんを愛してるから?」 答えられなかった。 愛している。 たぶん。 でも彼のことも好きだった。 だから、 「そう」 とは言えなかった。 「俺さ」 彼が言った。 「離婚しようと思ってた」 私は首を振った。 「それ、言わないで」 「本当に考えてた」 「お願いだから」 「なんで?」 私は少し考えて彼を見つめた。 そして、何も答えなかった。 彼も私を見つめて何も言わなかった。 それが、 二人で交わした最後の言葉になった。 あれから一年。 私は今も夫と暮らしている。 彼が離婚したのかは知らない。 連絡先も消した。 写真もない。 プレゼントもない。 二人で行った店の名前さえ、 もうほとんど覚えていない。 それでも、ときどき。 夫が眠ったあと、 暗いリビングでスマホを見ていると、 あの言葉だけを思い出す。 「妻とは、もう三年していない」 あの頃の私は、 彼の妻から大切なモノを奪っていると思っていた。 でも、違った。 あの半年間、 私が奪っていたのは、 自分の夫からだった。 — TIAIMINI
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TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
12 days ago
@sizennaa
ステキ💖
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@tiaimini
12 days ago
@haruna_staff
ステキ💖
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@tiaimini
12 days ago
@saaya_minase_
かわいい💖
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@tiaimini
12 days ago
@chijyuu_u
気になる!
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@tiaimini
12 days ago
@Tomomi452160520
おめでとうございます!
TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
14 days ago
@rd0kc ステキです💖
TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
14 days ago
@fumina2377
おはよう。けいどう?
TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
14 days ago
@FIRE60028219
行きたいな💖
TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
14 days ago
@lSBt5zmSni7Ttz4
おはようwww
TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
14 days ago
@kantikin
拷問だね笑
TIAIMINI SHORT STORIES
@tiaimini
14 days ago
@poco_a__poco___
行ってみたいな。
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