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善書のひかり
@zen_tradition
中国の伝統的な善書や霊的記録を翻訳しています。仏教・道教・儒家の教えに触れながら、心を整え、学び、善を育てる言葉を少しずつ。 世界が平和で、すべての人が安らぎと智慧を得られますように。
Japan
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善書のひかり
@zen_tradition
1 minute ago
『人間遊記』日本語訳 第二十二回 福徳を招き、家々の因果を説く 報いを受けるのは人――福も禍も心がつくる 済公活仏 降 壬戌年五月二十三日 詩 人の道を常に守れば、 家庭は和やかに栄える。 四維を守り行い、 親しき縁を厚くする。 日に三度、我が身を省みて、 己の心を清らかにし、 徳を四海に弘めながら、 喜んで道に励む。 済仏曰く: 世間には、 「棺を見なければ、涙を流さない」 という言葉がある。 この言葉が意味するのは、 人の心というものは、 往々にして頑なで、 なかなか変わろうとしない、 ということだ。 迷いの中にいる者は、 死を迎えるその瞬間まで、 なお自分勝手に振る舞い、 まるで 因果や輪廻など存在しない かのように生きている。 だから毎日、 酔生夢死の生活を送り、 名利の束縛の中を 転げ回っている。 そして、 いよいよ死期が迫ってから、 ようやく、 「人生は夢のようなものだった」 と嘆く。 しかし、 その時にはもう遅い。 昔から、 どれほど多くの 豪門や貴族たちが、 臨終の際になって、 世の人を目覚めさせるような 言葉を残してきただろう。 ところが、 そうした人々も、 生きている間には、 細かな損得にこだわり、 名声を貪り、 利益を追い求めていた。 まさに、 こういうことだ。 「生前には、わずかな徳さえ修めず、 臨終になると、善い言葉だけは尽きない。」 では、 生きている間に 善を行わなかったのは、 心はあったが、 力が足りなかったからなのか? それとも、 力は十分にあったのに、 その心が足りなかったからなのか? 老衲の見るところ、 多くの場合は、 力はあっても、 その心がない者が多い。 心はあっても、 力が足りない者は少ない。 これこそが、 衆生の病 なのである。 用語について 人倫(じんりん) 親子・夫婦・兄弟など、人と人との間で守るべき倫理や秩序。 四維(しい) 中国の伝統思想でいう「礼・義・廉・恥」。社会を支える四つの徳目とされた。 三省吾身(さんせいごしん) 『論語』に由来する表現。「日に何度も自分自身を省みる」という意味。 不見棺材不流淚 直訳すれば「棺桶を見なければ涙を流さない」。事態が取り返しのつかないところまで来なければ、なかなか目を覚まさないことのたとえ。 酔生夢死(すいせいむし) 酒に酔ったように生き、夢を見ているように死ぬこと。人生の意味を深く考えず、ぼんやり一生を送ることをいう。 名韁利鎖(めいきょうりさ) 名声を「手綱」、利益を「鎖」にたとえ、名利に縛られて自由を失っている状態をいう。 老衲(ろうのう) 年老いた僧が自分をへりくだっていう言葉。ここでは済仏の自称。 衆生病(しゅじょうのやまい) 身体の病気ではなく、善を知りながら実行しない、迷いにとらわれた人間の心のあり方を指している。
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善書のひかり
@zen_tradition
3 minutes ago
『人間遊記』日本語訳 第二十一回⑬ ―― 感謝を胸に、夜の中へ ―― 蔡生曰く: 私はもう、 蓮台にしっかりと 座りました。 恩師、 どうぞお帰りください! (この時、 李生の女魂は、 限りない感謝の思いを 胸に抱きながら、 朦朧とした夜の闇の中へ、 静かに姿を消していった。 ほどなくして、 済仏と蔡生を乗せた蓮台は、 再び 聖賢堂の上空 に姿を現した。) 済仏曰く: 聖賢堂に着いたぞ。 蔡生よ、 蓮台から降りなさい。 魂魄、身体へ戻れ。 第二十一回 完 この一回では、 「道を知る」だけではなく、 日々の中で実際に道を行うこと の大切さが説かれました。 浩然大仙は、 生涯にわたって道のために奔走した 自らの前因を語ります。 そして後半では、 仇を討つために ある修道者を追っていた女魂が、 その人について道場へ通ううち、 自らも教えを聞き、 長年抱いていた怨みを 次第に手放していきます。 本書ではここに、 怨みが感謝へ、 報復が修道の縁へと変わる という宗教的な因果の転換が 描かれています。 最後に済仏が贈った言葉―― 「各人修道各人得、 各人吃飯各人飽。」 道を修めることは、 誰かが代わってくれるものではない。 自ら歩み、 自ら実践してこそ、 その実りもまた 自らが得るという教えです。 用語について 蓮台(れんだい) 本来は仏・菩薩が座す蓮華の台座。本書では、済仏と蔡生が霊界を往来する際に乗るものとして描かれている。 魂魄投体(こんぱくとうたい) 遊行していた魂魄が肉体へ戻ること。本書の霊界遊行という物語設定にもとづく表現。 ※本回に登場する鬼魂・冥令・因果による報復・死後の修道などは、『人間遊記』の宗教的・霊界的世界観にもとづく記述です。 原文: https://t.co/CiGZrQaps6
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3 minutes ago
『人間遊記』日本語訳 第二十一回⑫ ―― 各人修道、各人得る ―― 女魂曰く: 肉体を持っている者は、 道を修めやすく、 将来、 修行の成果を成就して 封を受けるのも、 比較的早いのです。 しかし、 いったん陰身となれば、 成果を得るまでには 非常に長い時間がかかります。 必ず、 一歩一歩、 順序を踏んで進み、 幾重もの試練と磨きを 乗り越えてこそ、 ようやく関門を 通ることができる。 そういう理由なのです。 蔡生曰く: 志ある者は、 ついには事を成し遂げる。 あなたも、 決して落胆する必要はありません。 私は、 あなたがいつの日か 成就できることを 願っています。 女魂曰く: 励ましてくださって、 ありがとうございます。 済仏曰く: よし。 今日はもう 時間も遅くなった。 最後に、 わしからそなたへ 一言贈ろう。 「各人、道を修めれば、 その実りは各人が得る。 各人、飯を食べれば、 満腹になるのも各人である。」 李生の女魂よ、 そなたが道門に 近づくことができたのは、 そなたにとって 幸いなことである。 前途は限りなく開かれている。 これからは、 自らを大切にし、 しっかりと歩んでゆくのだ。 蔡生よ! そろそろ、 堂へ帰る準備をしよう。 用語について 証果(しょうか) 修行によって一定の悟りや成果に到達すること。仏教でも用いられる語だが、本書ではより広く「修道の成果を得る」という意味で使われている。 受封(じゅほう) 本書の宗教的世界観で、修行や功徳に応じて、死後に神仙などの位・称号を授けられること。 考磨(こうま) 修道者を試し、磨くさまざまな試練や困難。 有志者事竟成 「志ある者は、ついには事を成し遂げる」という意味。強い志を持ち続ければ、困難があっても成就へ至るという成語。 各人修道各人得,各人吃飯各人飽 修道は他人に代わってもらえるものではなく、自ら実践してこそ自らがその成果を得る、というたとえ。 ※「肉体を持つ者のほうが修道・証果しやすく、陰身ではより多くの試練が必要になる」という説明は、『人間遊記』独自の宗教的な死後観・修道観にもとづいています。
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4 minutes ago
『人間遊記』日本語訳 第二十一回⑪ ―― 仇人を追っていたはずが、道へ導かれていた ―― 蔡生曰く: なるほど! だから、 修道を始めてから、 身体が次第に健やかになり、 家庭がだんだん和やかになり、 仕事や事業も 少しずつ順調になっていく人が いるのですね。 しかし今日は、 本当に思いもしませんでした。 あなたはもともと、 仇を討つために その人を追っていた。 ところが、 追い続けているうちに、 道門にまでやって来て、 一緒に道を聞くようになった。 そしてついには、 報復の心が、 かえって感謝の心へと 変わってしまった。 ははは! 道の働きとは、 本当に不思議なものですね! ……。 こうして考えると、 あなたの霊性を救ったのは、 かつての仇人だった とも言えるのですね! 女魂曰く: その通りです。 今では、 毎日のように教えを聞くうちに、 心の中の怨みも、 少しずつ消えてきました。 そして、 霊としての智慧も、 次第に明らかになってきました。 冥界へ戻った後は、 願わくば、 地蔵古仏の蓮下で、 さらに大道を学びたい と思っています。 蔡生曰く: それなら、 あなたにとって、 まさに得難い ご縁ですね。 女魂曰く: はあ……。 生きていた頃は、 修道がどれほど尊いものか、 まったく分かりませんでした。 今となっては、 すでに肉体を失い、 陰身 となってしまいました。 こうなってからでは、 道を修めることも、 以前より難しいのです。 蔡生曰く: それは、 どういう意味なのですか? 用語について 道之妙用(どうのみょうゆう) 「道」がもたらす奥深く不思議な働き。本段では、報復のために道場へ来た女魂自身が、逆に教えによって感化されたことを指している。 霊性(れいせい) 本書では、人間や霊が本来的に備えている霊的な本性・智慧を指す。 地蔵古仏(じぞうこぶつ) 本書における地蔵菩薩への尊称。仏教では地蔵菩薩は、苦しむ衆生を救済する菩薩として広く信仰されている。 蓮下(れんげ) 文字通りには「蓮華のもと」。ここでは仏・菩薩のもとで教えを受け、修行することを表す宗教的表現。 陰身(いんしん) 本書の霊界観で、肉体を失った後の霊的な身を指す言葉。 ※「修道によって身体・家庭・事業が好転する」「死後に地蔵古仏のもとで修道する」といった内容は、『人間遊記』の宗教的世界観にもとづく説明です。
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『人間遊記』日本語訳 第二十一回⑩ ―― 仇を追って道場へ、そして怨みが消えていく ―― 蔡生曰く: それでは、 あなたはどのようにして 仇を討っていたのですか? 女魂曰く: 私たちには、 肉体がありません。 あるのは、 一股の 陰霊の気 だけです。 本書の霊界観では、 この陰の気が 人の魂魄に取りつくと、 その人は、 精神が落ち着かなくなり、 身体の調和も 崩れやすくなるとされています。 そして、 怒りやすくなったり、 心が乱れたり、 不安になったりする。 家庭では、 争いが起こりやすくなり、 仲も悪くなる。 仕事や事業も、 うまくいきにくくなるのです。 ですから、 今、 堂内で道を聞いている 陳○○ という人も、 五、六年前には、 心身ともに、 たびたび私から 苦しめられていました。 しかし、 彼は道理を理解していました。 私がどれほど 報復しようとしても、 また、 家庭にどのような波風が 起こったとしても、 彼はいつも、 辱めや苦しみに耐え、 怨むことがありませんでした。 そして最近では、 私も彼の後ろについて 道場へ来るうちに、 いつしか、 ここで説かれる道を 一緒に聞くようになったのです。 そうして、 長い年月が過ぎるうちに、 私自身も感化されました。 今ではもう、 仇を討とうとは 思わなくなったのです。 用語について 陰霊之気(いんれいのき) 本書で、肉体を失った霊が持つとされる「陰」の霊的な気を表す言葉。 魂魄(こんぱく) 中国の伝統的な生命観で、人間の精神・生命を構成すると考えられた霊的要素。「魂」と「魄」を合わせた語。 忍辱(にんにく) 仏教で、侮辱・苦難・迫害などに遭っても、怒りや怨みに流されず耐えること。「六波羅蜜」の一つである忍辱波羅蜜にもつながる概念。 感化(かんか) 教えや他者の行いに触れることで、心や考え方が次第に変化すること。 ※霊が人の魂魄に取りつくことで、精神的不調、身体症状、家庭不和などが生じるという説明は、『人間遊記』の宗教的霊界観です。現実の心身の不調や家庭・仕事上の問題にはさまざまな現実的・医学的要因があり、霊的原因を医学的事実として示すものではありません。
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5 minutes ago
『人間遊記』日本語訳 第二十一回⑨ ―― 仇を求めて、道場まで来た女魂 ―― 蔡生曰く: それでは、 一人の冤魂を呼んで、 話を聞くことは できませんか? 済仏曰く: できるとも。 では、 わしが一人、 ここへ呼んでみよう。 (すると、 一人の女魂が、 自分の意志では抗えないまま、 蔡生の前へやって来た。) 蔡生曰く: そこの女魂よ、 怖がる必要はありません。 あなたが、 なぜここへ来たのか、 その理由を話してくれれば それでよいのです。 女魂曰く: ……わ、私は…… ……。 (ひどく驚いている様子で、 しばらく言葉が 出てこなかった。) 蔡生曰く: ゆっくり話してください。 慌てなくても 大丈夫ですよ。 済仏曰く: もう時間も遅い。 では、 わしが 「定心丹」 を一粒出して、 この者に飲ませよう。 (女魂は、 定心丹を飲んだ。) 女魂曰く: 大神さま、 どうかお赦しください。 私はここへ来たことに、 別に何か企みが あるわけではありません。 蔡生曰く: 分かりました。 それでは、 どうしてあなたは ここへ来ることが できたのですか? 女魂曰く: 私は冥府で、 冥令 を受けました。 そのため、 陽の世界へ戻り、 ある人を捜して、 仇を討つことを 許されていたのです。 ところが、 私が仇として捜していたその人が、 まさか今になって、 道を学び、 自らの身を修めているとは……。 本当に、 思ってもいませんでした。 蔡生曰く: それでは、 あなたの仇であるその人は、 神壇へ行って、 神聖に仲裁してもらおうとは しなかったのですか? 女魂曰く: 冤欠というものは、 ちょっとした「祟り」や 一時的な障りとは違います。 どうして、 ほんの二言三言で、 簡単に解決できるでしょうか。 用語について 冤魂(えんこん) 強い怨みや、晴らされていない因縁を抱いているとされる霊。本書の宗教的世界観における呼称。 定心丹(じょうしんたん) 文字通りには「心を落ち着かせる丹薬」。ここでは済仏が女魂の恐怖を鎮め、話せるようにする霊的な丹薬として描かれている。 冥府(めいふ) 死者の霊が赴くとされる冥界の役所・世界。 冥令(めいれい) 本書では、冥府から霊に下される命令・許可をいう。 冤欠(えんけつ) 過去に相手へ負わせた害や苦しみが「負債」のような因縁となり、後に償いを求められるとする本書の宗教的概念。 沖犯(ちゅうはん) 中国の民間信仰などで、霊的存在や禁忌などに触れたため、一時的な障りを受けるとする考え。女魂はここで、「自分たちの冤欠は、そのような軽い問題ではない」と述べている。 ※「冥府から仇討ちの許可を得る」「霊的な冤欠が人につきまとう」といった内容は、『人間遊記』の宗教的霊界観にもとづく物語上の説明です。
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善書のひかり
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『人間遊記』日本語訳 第二十一回⑧ ―― 仏堂の外で待つもの ―― 蔡生曰く: 恩師、 先ほど大仙は、 この善男善女たちが 堂内に入って 道を聞いている間は、 冤孽が中へ入って 邪魔をすることはできない とおっしゃっていました。 それなら、 彼らはいったい、 どこに身を潜めているのですか? 済仏曰く: 賢徒よ、 そなたはまだ 知らないのだ。 堂内には、 仏光があまねく照らし、 さらに神仙も この道場を守っている。 そのため、 本書でいう 報いを求めて来た冤孽たちは、 中へ入ることができない。 今は皆、 堂の外に隠れているのだ。 蔡生曰く: 本当に、 そんなことがあるのですか? 済仏曰く: 信じられないのなら、 待っていなさい。 わしがこの仏扇を ひと振りすれば、 すぐに分かる。 蔡生曰く: それなら、 ぜひお願いします! (この時、 済仏が仏扇を取り出して ひと振りすると、 仏光が辺りを照らした。 すると、 本書の描写では、 それまで見えなかった鬼魂たちが 次々と本来の姿を現した。 皆、 慌てふためき、 恐れおののきながら、 四方へ逃げ、 身を隠そうとした。 蔡生は、 これまで一度も 見たことのない光景に、 目を見張り、 驚きのあまり顔色を失った。) 蔡生曰く: 先ほどから、 鬼魂たちが 堂の外で待っていたのなら、 なぜ私には、 まったく見えなかったのですか? 済仏曰く: そなたは今、 まだ 仏眼の境地 には達していない。 だから、 陰の世界にあるものを 見ることができないのは、 当然なのだ。 用語について 善男善女(ぜんなんぜんにょ) 仏教で、仏法を信じる在家の男女を表す伝統的な呼称。本書では、道場で教えを学ぶ男女を広く指している。 冤孽(えんげつ) 過去の怨みや悪因によって生じた因縁・障りを指す宗教的表現。本段では、その報いを求めて人につきまとう霊的存在という意味で使われている。 仏光普照(ぶっこうふしょう) 仏の光があまねく照らすこと。仏の智慧や慈悲が広く及ぶことを象徴する表現でもある。 仏眼(ぶつげん) 仏教では物事の真実を見通す仏の智慧の眼をいう。本書では、通常の人には見えない霊的存在を見る能力とも結びつけて描かれている。 ※道場の外に鬼魂が待っていることや、仏光・仏扇によって霊が姿を現すという部分は、『人間遊記』の宗教的霊界観にもとづく物語上の描写です。
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善書のひかり
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『人間遊記』日本語訳 第二十一回⑦ ―― 浩然の性、九霄を貫く ―― 大仙曰く: しかし、 私の中にあった 一点の 「浩然の性」 は、 九霄をも突き抜けた。 そのため、 本書の説くところでは、 老母 の感応を受け、 私は、 「浩然大仙」 の号を授けられたのである。 けれども私は、 自分の道功が、 まだ十分ではないことを よく知っている。 だから、 天から受けた 厚い恩に報いるため、 再びこの世へ下り、 道を助ける働き をしているのだ。 蔡生曰く: 本当に、 心を打たれるお話です。 それでは、 今夜、 大仙がこの世へ 降りてこられたのは、 どのような大切な務めが あるからなのでしょうか? 大仙曰く: 私は各地を巡っているが、 それもすべて、 道のために奔走している にほかならない。 例えば、 道を弘める人々が、 実際にどれほど 修行と実践に励んでいるかを 見守ること。 その働きに応じて、 功分の多少を評定すること。 そして、 道場の清浄を守り、 鬼魂が勝手に入り込んで 乱すことのないようにすること。 それらが、 私の務めなのである。 蔡生曰く: なるほど、 そういうことだったのですね。 大仙、 ご教示いただき、 ありがとうございます。 大仙曰く: 賢生よ、 そのように かしこまることはない。 それでは、 今日はここで お別れするとしよう。 また縁があれば、 お会いしよう。 (この時、 浩然大仙は済仏に拝礼し、 別れを告げた。 蔡生もまた、 大仙に感謝して 礼をした。) 用語について 浩然の性 「浩然」は、広大で正しく、天地に満ちるような気概を表す語。本段では、大仙が生涯守り抜いた正しい精神・本性を指している。 九霄(きゅうしょう) 非常に高い天空、天の最も高いところを表す伝統的表現。「九霄を衝く」は、その精神や気概が天まで達するほど強いことをいう。 老母(ろうぼ) ここでは通常の「年老いた母親」ではなく、本書の宗教体系で尊崇される最高位の母性的神格を指す呼称。 道功(どうこう) 修道や道を弘める実践によって積まれる功。 功分(こうぶん) 本書の宗教的世界観で、善行・修道・布道などによって積まれ、その多少が評価されるとする「功」の尺度。 道場(どうじょう) ここでは仏教寺院だけを意味するのではなく、人々が集まって道を学び、修め、教えを説く場所を広く指している。 ※「封号」「功分の評定」「神仙が道場を守って鬼魂の侵入を防ぐ」という描写は、『人間遊記』独自の宗教的・霊界的世界観にもとづいています。
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善書のひかり
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8 minutes ago
『人間遊記』日本語訳 第二十一回⑥ ―― 生涯、道のために奔走した ―― 大仙曰く: お恥ずかしい話です。 今日、 私が 「浩然大仙」 の号を授けられたのは、 生前、 一生を通じて 道のために奔走し、 死に至るまで、 自らの節操を 変えなかったからです。 ただ、 道に殉じて 命を終えただけで、 それほど大きな功徳が あったわけではありません。 蔡生曰く: ああ! その精神は、 本当に心を打つものです。 それでは大仙は、 どのように 道を行っておられたのですか? 大仙曰く: それを話せば、 少し長くなる。 二十数年前、 大道が広く伝えられていた頃、 私も縁あって、 真伝を受けることができた。 そこで初めて、 大道の尊さを知り、 それからは各地を巡って、 人々に善を勧め、 人を助けることを 自らの喜びとしてきた。 ある日、 両親が重い病にかかり、 薬を飲んでも 効き目がなかった。 そこで私は願を立て、 自分の寿命を削り、 その分を両親の寿命に 加えていただきたい と祈った。 それ以来、 本書の説くところでは、 家族の罪や過ちによるものまで、 私一人が引き受けるようになり、 そのため、 身体も次第に 健康を損なっていったという。 しかし、 私の道心は 揺らがなかった。 どのような試練や磨きを受けても 恐れることなく、 なお各地を巡り、 道を説き続けた。 人から頼まれれば、 決して断らず、 長い間、 奔走を続けた。 その結果、 疲労が積み重なって 病となり、 数年前、 私に定められた寿命が尽き、 そのまま 帰空したのである。 用語について 浩然大仙(こうぜんたいせん) この大仙に授けられた称号。「浩然」は、正しく大きく、天地に満ちるような気概を表す語。 殉道(じゅんどう) 自らが信じ、実践する「道」のために身命を捧げること。本段では大仙自身が、生涯にわたり修道・布道を続けたことを指している。 真伝(しんでん) 師から正しく伝えられる真実の教え。本書では「大道」の正式な教えを授かるという宗教的意味で用いられている。 考磨(こうま) 修道の過程で遭遇する試練や困難。それによって修道者の心が試され、磨かれるという意味。 帰空(きくう) 本書で、人がこの世での生涯を終えて霊界へ帰ることを表す宗教的な婉曲表現。 ※「自分の寿命を両親へ移す」「家族の罪愆を一人で引き受けたため身体を損なう」という説明は、『人間遊記』の宗教的因果観にもとづく大仙自身の物語です。病気や寿命についての医学的・科学的な因果関係を示すものではありません。
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善書のひかり
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『人間遊記』日本語訳 第二十一回⑤ ―― 天上の安楽を捨て、道を助ける ―― 済仏曰く: 今、 一柱の神聖が 私たちを迎えに来た。 さあ、 行ってみよう。 蔡生曰く: はい。 (この時、 一人の大仙が足早に進み出て、 済仏を出迎えた。) 蔡生曰く: 後学の蔡生、 大仙にご挨拶申し上げます。 大仙曰く: 蔡生よ、 礼には及ばない。 今日ここで、 そなたと縁を結ぶことができ、 わしも大変光栄に思う。 貴堂は、 衆生を広く教え導くため、 神も人も、 常に心血を注ぎ、 力を尽くしている。 実に、 深く敬服するところである。 蔡生曰く: 大仙からそのような 励ましのお言葉をいただき、 恐縮でございます。 それよりも、 大仙が、 天上で自在に過ごす楽しみを捨て、 この世へ降り、 各地で道を助けておられること のほうが、 さらに心を打たれます。 大仙曰く: いやいや、 とんでもない。 今は、 天の時が人を待たぬ時。 そのため、 仙仏たちは各地へ赴き、 道を弘める人々を 助けているのだ。 これは、 わし一人だけのことではない。 南贍部洲の至るところで、 皆そのようにしているのである。 蔡生曰く: 大仙は、 お若くして 大いに成し遂げられたように お見受けします。 いったい、 どのように修めて、 今日の境地に 至られたのでしょうか? 用語について 神聖(しんせい) ここでは「神聖なもの」という形容ではなく、本書に登場する神仙・仙仏などの霊的存在を指す呼称。 接駕(せつが) 本来は高位の人物を迎える意味。本書では、神仏を恭しく出迎えることを表している。 普化(ふか) 教えを広く世に伝え、人々を善や修道へ導くこと。 天時不怠 原文では、天の時機が切迫しており、怠ってはいられないという趣旨。ここでは「天の時が人を待たぬ時」と訳した。 南贍部洲(なんせんぶしゅう) 仏教の伝統的世界観における四大洲の一つ。人間が住む世界とされ、サンスクリット語の Jambudvīpa(閻浮提)に相当する。 ※「仙仏が天上から下り、各地で道を助ける」という記述は、『人間遊記』の宗教的世界観にもとづくものです。
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善書のひかり
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9 minutes ago
『人間遊記』日本語訳 第二十一回④ ―― 信は、道の源であり功徳の母 ―― 蔡生曰く: 恩師は本当に、 言うべきことを すべて語り尽くされました。 もし善書を読んでも、 なお一途に迷い続け、 愚かな執着から 目覚めようとしないのであれば、 それはもう、 自らの愚かさを省み、 仏との縁を自ら遠ざけている と考えるほかありませんね。 済仏曰く: その通りだ! では、 師弟の話は 今日はここまでにして、 出発の準備をしよう! 蔡生曰く: はい! もう蓮台に しっかり座りました。 恩師、 どうぞ出発してください! 済仏曰く: 賢徒よ! 目的地に着いたぞ。 今、 蓮台の上から見ると、 前方に一つの 仏堂 がある。 中にいる人々は、 ちょうど道理を 学んでいるところだ。 蔡生曰く: 末世になってから、 さまざまな教門が現れ、 本当に、 すべてを知り尽くすことは できないほどですね。 しかし、 道を弘める人々は皆、 衆生の苦しみからの 解脱を願い、 慈悲の心から 活動しているのでしょう。 済仏曰く: 末世の今、 大道の門は大きく開かれ、 広く衆生を救い導き、 それぞれ縁ある道子を 導いている。 この時代に生まれながら、 なお道門に近づき、 道を修めることができないなら、 本書では、 せっかく人として生まれた この一生を空しくする と説くのだ。 蔡生曰く: はい。 ここは、 公共の仏堂のようですね。 中には二、三十人ほどが、 一心に集中して、 壇上の講師の説法を 聞いています。 黒板には、 こう書かれています。 「信は道の源、功徳の母。 信はよく生死の苦を遠ざけ、 信はよく諸々の善根を育て、 信は菩提の基礎となる。」 ははは! やはり修道には、 信じる心 が必要なのですね! 用語について 末世(まっせ) 仏教などで、時代が下るにつれて正しい教えが衰えていくという歴史観に関係する語。本書では、多くの教門が現れ、大道が広く伝えられる時代という独自の宗教観とも結びついている。 道子(どうし) 本書で、道と縁があり、修道へ導かれる人を指す宗教的表現。 信為道源功徳母 「信は道の源であり、功徳を生み育てる母である」という意味。仏教で重視される「信」の働きを表す表現。 善根(ぜんこん) 仏教で、善い結果を生み出す根となる善い性質や行為。 菩提(ぼだい) サンスクリット語 bodhi に由来し、「悟り・覚り」を意味する仏教語。 ※この黒板の四句は、仏教的な「信」の語彙を用いて修道の基礎を説くものです。本書では、それを特定の宗派だけに限定せず、自らの修道観の中に取り入れて解釈しています。
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善書のひかり
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10 minutes ago
『人間遊記』日本語訳 第二十一回③ ―― 善を前に退き、名利を前に群がる ―― 済仏曰く: そなたは、 彼らが道門へ入ろうとしないのは、 勇気がないからだと言った。 しかし、 実はそうではない。 名声を貪り、 利益を追い求める人の中には、 ひとたび善い行いを目にすると、 かえって恐れ、 尻込みする者がいる。 ところが、 名誉や利益、 地位や財物による 得があるとなれば、 まるで蟻の群れが 生臭い肉に群がるように、 いつまでもまとわりつき、 離れようとしない。 蔡生曰く: 恩師のおっしゃる通りですね。 そう考えると、 彼らに勇気がないのではなく、 ただ、 目先のことしか見えず、 見識が浅い ということなのですね。 済仏曰く: 『道経』には、 このような言葉がある。 「上士、道を聞けば、 勤めてこれを行う。 中士、道を聞けば、 あるがごとく、なきがごとし。 下士、道を聞けば、 大いにこれを笑う。 笑われなければ、 道とするには足りない。」 だから、 道の尊さは、 言葉では語り尽くせず、 形容することも難しい。 その価値を本当に理解し、 大切にできるのは、 本書でいう、 上士・上根・上善・上智の人である。 一方、 下根・下智の人は、 ただ 名誉と利益の束縛 の中をぐるぐると回り、 七情六欲に埋没し、 六道輪廻の中を めぐり続けることになる。 用語について 群蟻附羶(ぐんぎふせん) 蟻の群れが生臭い肉に集まることから、利益のあるところへ人々が争って群がる様子をたとえた表現。 上士聞道 『道徳経』第四十一章に見られる言葉。優れた者は「道」を聞けば実践し、中ほどの者は半信半疑となり、下位の者は笑う、と説く。本書では修道への姿勢の違いを説明するために引用している。 名韁利鎖(めいきょうりさ) 名声を「手綱」、利益を「鎖」にたとえ、名利に縛られて自由を失っている状態をいう。 七情六欲(しちじょうろくよく) 人間のさまざまな感情と欲望をまとめた伝統的表現。具体的な分類は典籍によって異なる。 六道輪廻(ろくどうりんね) 仏教で、衆生が迷いと業によって六つの世界を生まれ変わり続けるという輪廻観。 ※「上根・下根」「上智・下智」などは、原文が修道への理解や姿勢を分類するために用いている伝統的な宗教表現であり、人間そのものの価値に上下があるという意味ではありません。
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『人間遊記』日本語訳 第二十一回② ―― 難しいか易しいかは、自らの心にある ―― 蔡生曰く: 恩師のおっしゃる通りです。 道を行うことは、 難しいと言えば、 確かに難しい。 しかし、 易しいと言えば、 また本当に易しいものです。 誠心があり、 意志の堅い人 にとっては、 道を行うことは 易しいでしょう。 けれども、 少しの誠心もなく、 ただ、 「ちょっと見て、 参考にするだけ」 という気持ちでいる人にとっては、 大道を修めることは、 きっと非常に難しいでしょう。 なぜなら、 自ら問題を作り出し、 それによって、 道へ入ることを 自分自身で妨げてしまうからです。 済仏曰く: 賢徒よ、 そなたの言うことも その通りだ。 聖賢堂の諸生が 道を行っている姿を見ると、 まるで、 とても容易なことのように 見えるだろう。 しかし、 門の外から眺めている人には、 まるで、 非常に難しいことのように 見える。 実のところ、 難しいか、易しいかは、 すべて自分自身の決心にある。 もし、 堂々と一歩を踏み出し、 道門へ入ることができるなら、 道を学ぶことに、 いったい何の難しさが あるというのだろうか? 蔡生曰く: それでも、 道門へ踏み込むことが できない人たちは、 やはり、 勇気がないからなのでしょうか? 用語について 誠心(せいしん) 偽りのない、真心。本段では、一時的な興味ではなく、本気で道を学び実践しようとする心を指す。 大道(だいどう) 文字通りには「大いなる道」。本書では、人が修め実践すべき普遍的な真理・道を意味する宗教的概念。 道門(どうもん) 道を学び修める世界、またはその門に入ることを表す言葉。本書では修道の道へ正式に踏み出す意味で使われている。 何難之有 「いったい何の難しさがあろうか」という反語表現。決心して踏み出すなら、修道そのものを必要以上に難しく考える必要はない、という済仏の教え。
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善書のひかり
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『人間遊記』日本語訳 第二十一回 真の道を修め、大仙が前世の因縁を語る 因果の報いをたどり、陰魂が悟って道理に目覚める 済公活仏 降 壬戌年五月初三日 詩曰く 無為の道を修めれば、 幾重もの障りを打ち破る。 浮華と虚妄は、 道の基礎を妨げる。 誠心をもって道を行えば、 ついには実を結ぶ。 途中で投げ出すことは、 織りかけの機を断つようなもの。 済仏曰く: 道を学ぶ! 道を学ぶ! 道を修める! 道を修める! 道を行う! 道を行う! 年々、 そこに道があり、 日々、 そこに道がある。 道は「二六時中」にある。 いついかなる時も、 心に道心を保ち、 道を念じ、 それに従って行う者。 それこそが、 真の道 なのである。 もし、 うわべだけで心が伴わず、 偽りの気持ちで修め、 途中でやめてしまうなら、 これほど惜しいことはない。 だから、 道を行う者は、 「道とは何か」 ということを、 必ず深く究めなければならない。 そうしてこそ、 せっかく 宝の山に入りながら、 空手で帰ってくる ようなことには ならないのである。 用語について 無為(むい) 道家・中国思想で重要な概念。単に「何もしない」という意味ではなく、私欲や作為にとらわれず、道の自然なあり方に従うことをいう。本書では修道の境地として用いられている。 二六時中(にろくじちゅう) 昔の中国で一日を十二の時辰に分けたことから、「十二時辰すべて」、つまり一日中・いついかなる時もという意味。 道心(どうしん) 道を求め、道に従って生きようとする心。 入宝山而空手回 「宝の山に入ったのに、何も持たずに帰ってくる」。貴重な教えに出会いながら、その価値を理解せず何も得られないことのたとえ。 半途而廃、如断機 途中で学びや修行をやめることを、織っている途中の布を断ち切ることにたとえた表現。「断機」は、中国の伝統的な教訓故事を連想させる言葉でもある。
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善書のひかり
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『人間遊記』日本語訳 第二十回⑯ ―― 悪を捨て、善に帰る ―― 蔡生曰く: 林師姉、 聖賢堂には、 多くの女性修道者がいます。 彼女たちは、 たくさんの書物を 読んできたわけではありません。 しかし、 道を守ろうとする志は、 決して男性にも劣りません。 どうか、 彼女たちの精神を 多く学んでください。 今日、 あなたが済仏恩師と 師弟の縁を結ぶことが できたのは、 まさに、 三生の幸い というべきことでしょう。 済仏曰く: よく言った! 今日は、 もう時間も遅い。 林生、わが女弟子よ。 わしらは、 聖賢堂へ戻らなければならない。 そなたも、 どうか自分を大切にして、 しっかり修めていきなさい。 蔡生よ、 蓮台にしっかり座りなさい。 聖賢堂へ戻るぞ! (この時、 林女魂は、 感謝の心と、 別れを惜しむ思いを胸に、 済仏と蔡生に 手を振って別れを告げた。 蔡生の心には、 限りない祝福の思いが 満ちていた。) 願わくは、 この世のすべての人々が、 悪を捨てて善に従い、 ともに仏道へ帰することが できますように。 そう願った、 その一念の間に、 聖賢堂は、 たちまち目の前に 姿を現した。 済仏曰く: 聖賢堂に着いたぞ。 蔡生よ、 蓮台を降りなさい。 魂魄、身体に戻れ。 用語について 坤道(こんどう) 中国の伝統思想で「坤」は陰・女性を象徴する。本書では女性の修道者を指して「坤道」と呼んでいる。 鬚眉(しゅび) ひげと眉を意味し、古くは男性を指す表現。「不讓鬚眉」は「男性にも劣らない」という意味。 三生有幸(さんしょうゆうこう) 「三生」は過去世・現世・来世など、幾世にもわたる生命を表す宗教的表現。「三生有幸」は、幾世にもわたるほどの大きな幸運・得難い縁という意味。 棄悪従善(きあくじゅうぜん) 悪を捨て、善に従うこと。 斉帰仏道(せいきぶつどう) 皆がともに仏道へ帰していくこと。本書では宗教的な救済・修道への願いとして用いられている。 第二十回・まとめ 第二十回は、 「信心は力の源である」 という教えから始まった。 人生を長距離走にたとえ、 一時の熱心さではなく、 最後まで志を変えないこと の大切さを説く。 その後の霊遊では病院を訪れ、 病苦や人間関係を 本書独自の三世因果・冤欠という 宗教的世界観から描いている。 そして後半では、 被害を受けた女魂と 加害した男性との怨みを通して、 報復を繰り返せば、 怨みはさらに続いていく。 だからこそ、 過去の怨念だけに囚われず、 自らのこれからを修めること、 そして、 「誰にも仏性があるのだから、 自分を軽んじてはならない」 という教えへと結ばれている。 ――第二十回 完―― 原文: https://t.co/CiGZrQaps6
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善書のひかり
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『人間遊記』日本語訳 第二十回⑮ ―― 自分を軽んじてはならない ―― 女魂曰く: 恩師、 お教えくださり、 ありがとうございます。 しかし私は愚かで、 果たして修行を 成就することができるのか、 自信がありません。 済仏曰く: 林生、わが女弟子よ。 もう一度、 よく聞きなさい。 人には誰にでも、 仏性がある。 だから、 大道を修めることに、 身分の高い低いも、 貧しい富めるも、 区別はない。 ただ、 真心と誠意 さえあれば、 自ら、 あらゆる困難を 乗り越えることができる。 決して、 自分自身を 軽く見てはならない。 よく覚えておきなさい。 たとえ、 世間から「下等」と 見られるような人であっても、 精進する心があれば、 自ら道を成就することができる。 反対に、 世間から「上等」と 見られる人であっても、 驕り高ぶることが 習い性となっていれば、 かえって、 道を成就することはできない。 このような言葉がある。 「富貴の者は道を学ぶこと難く、 貧しく愚かな者は、 かえって修道を堅く守る。」 どうか、 このことを心に留め、 これからの自分を 大切にしなさい。 (この時、 林女魂の心には、 深い感謝の念が 一気に湧き上がった。 彼女は涙にむせび、 言葉を発することさえ できなかった。) 用語について 仏性(ぶっしょう) 仏教で、衆生が仏となり得る可能性・本性を表す重要な概念。本書では「誰にも本来的に備わる霊性」という意味合いも込めて用いられている。 精誠(せいせい) 偽りのない、ひたむきで誠実な心。 精進(しょうじん) 怠ることなく、善や修行に努め続けること。 富貴学道難、貧愚修道堅 富や地位に恵まれると執着や驕りが生じ、かえって道を学びにくい一方、貧しく学識に乏しくても、ひたむきに修道を続ける者がいる、という本段の戒め。人の価値を貧富や知性によって上下に分けるという意味ではない。 好自為之 自分自身を大切にし、これから正しく努めていくように、という勧めや戒めを含む表現。
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善書のひかり
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『人間遊記』日本語訳 第二十回⑭ ―― 怨みを手放し、道を学ぶ ―― 女魂曰く: ううっ……。 大仏さま、 お教えくださり、 ありがとうございます。 私は生前、 ほんのわずかな徳さえ 修めることがありませんでした。 今日、 こうして大仏さまの説法を 聞くことができ、 本当に恥ずかしく思います。 済仏曰く: 林女魂よ。 今日、 『人間遊記』を著している この時に、 そなたと縁があり、 こうして出会うことができた。 そして、 そなたは自分が受けた被害の経緯を、 一つ一つ、 すべて語ってくれた。 もし、 そなたに 道を学ぼうとする心 があり、 過去の恩や怨み、 そして報復しようとする思いを 捨てることができるなら、 わしは、 そなたのために法を説き、 そなたを弟子として 迎えようと思う。 そなたは、 それを望むか? 女魂曰く: ありがとうございます、 大仏さま! ありがとうございます! (この時、 林女魂は跪き、 頭を地につけて礼をし、 その恩に感謝した。 済仏は、 彼女のために 教えを説いた。) 済仏曰く: よろしい。 これからは、 しっかりと 修めていきなさい。 よく覚えておくのだ。 本書では、 あらゆる善縁も悪縁も、 過去世からの因縁によって 招かれたもの と説いている。 だからこそ、 何事にも執着しすぎず、 心を開いて受け止めることだ。 欺かれ、 苦しめられることがあっても、 怨みを抱き続けず、 より多く、 自らを犠牲にし、 耐え忍ぶ精神 を学びなさい。 いつの日か、 功が成り、 修行の果が満ちれば、 九品蓮台 の境地を証することも できるだろう。 用語について 片徳未修(へんとくみしゅう) 「わずかな徳さえ修めてこなかった」という謙遜・悔悟の表現。 学道(がくどう) 「道」を学び、心身を修めること。本書では宗派を限定せず、善を行い本性を修める宗教的修行という意味で用いられている。 宿世(しゅくせ) 現在の生より以前の過去世。仏教的な輪廻・因果観で用いられる語。 功成果満(こうじょうかまん) 修行や善行の功が成就し、その果が満ちること。 九品蓮台(くほんれんだい) 浄土教の「九品往生」や蓮華のイメージに由来する宗教的表現。本書では、修行を成就した後に至る高い霊的境地として用いられている。 ※「受欺不怨」「犠牲忍辱」は本書が説く修行上の理想です。現実に暴力・虐待・性的被害などを受けた人が、被害を我慢したり、加害者への責任追及を放棄したりしなければならない、という意味ではありません。また「善縁・悪縁は宿世によって招かれる」という説明は、本書の宗教的因果観です。
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善書のひかり
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『人間遊記』日本語訳 第二十回⑬ ―― 報復すれば、怨みは終わるのか ―― 蔡生曰く: それでは、 あなたは、 どのようにして 彼に報復しているのですか? 女魂曰く: 私は、 自分の陰霊としての力を すべて使い、 彼の魂魄の上に 重くのしかかりました。 そして、 彼の心と精神に、 非常な苦しみを 感じさせているのです。 蔡生曰く: しかし、 そのようにすることも、 正しいとは言えません。 人には誰しも、 他人の苦しみを憐れむ心 があるはずです。 どうして、 人が弱っている時に その隙につけ込むのですか? 女魂曰く: そうしなければ、 私には、 報いを求める機会が なかったのです。 蔡生曰く: それでは、 済仏恩師から、 あなたに教えを 説いていただきましょう。 済仏曰く: 林女魂よ。 善には善の報いがあり、 悪には悪の報いがある。 しかし、 恩と怨みを いつまでも重ね続けていて、 いったい、 いつになれば 終わるというのだ。 わしは、 そなたがその怨む心を 解き放つことを願っている。 本書の説くところでは、 あの男の霊性は、 すでに 禽獣の境界へと堕ちており、 将来は、 自らその悪果を 受けることになる。 だから、 そなたがいつまでも 不平を抱き、 怨み続ける必要はない。 それよりも、 早く自分自身の将来を 考えなさい。 真心をもって善を行い、 人を助けることを喜びとする。 それこそが、 そなたが今、 なすべきことなのだ……。 用語について 魂魄(こんぱく) 中国の伝統的な生命観における霊的概念。「魂」と「魄」から人の精神・生命を説明する考え方。 惻隠之心(そくいんのこころ) 他人の苦しみを見て、かわいそうだと感じる心。儒教、とりわけ『孟子』で重視される考えで、仁の芽生えとされる。 善有善報、悪有悪報 「善には善の報いがあり、悪には悪の報いがある」という伝統的な因果応報の表現。 恩恩怨怨何時了 恩や怨みを互いに返し続けていたら、いつになれば終わるのか、という意味。ここでは報復の連鎖を断つよう諭している。 禽獣之界(きんじゅうのかい) 本書の輪廻観において、人より低い生命の境界へ堕ちることを表す宗教的表現。 ※男性の苦痛を「女魂が魂魄を圧迫したため」とする部分や、将来「禽獣の境界へ堕ちる」とする説明は、『人間遊記』の霊魂観・因果応報観に基づく物語上の説明です。
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善書のひかり
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『人間遊記』日本語訳 第二十回⑫ ―― 十三年後、ようやく見つけた仇人 ―― 蔡生曰く: なるほど、 そういう事情だったのですね。 それでは、 あなたはどうやって 彼を見つけたのですか? 女魂曰く: それを話せば、 長い話になります。 確かに、 私は長い間、 彼を探し続けました。 そして、 ようやく見つけることが できたのです。 蔡生曰く: その経緯を、 私に話してもらえますか? 女魂曰く: はい。 私は、 彼が大変な賭博好きで、 賭博場に 出入りしているはずだと 知っていました。 そこで十五年前、 私は毎晩、 各地の賭博場を 探し回りました。 そして、 十三年前のある夜、 ついに、 彼を見つけたのです。 それから私は、 ずっと彼の後を ついて回りました。 しかし、 当時の彼は 陽気が非常に盛んだった ため、 私には、 まだ彼をどうすることも できませんでした。 だから私は、 ただひたすら、 機会が訪れるのを 待ち続けたのです。 蔡生曰く: それは、 どうしてですか? 女魂曰く: おそらく、 祖先の徳――祖徳 とも関係があったのでしょう。 ……。 ところが五年前、 ある日のことです。 彼は酒に酔い、 そのままオートバイに乗り、 意識もぼんやりした状態で 転倒しました。 本書の物語では、 私はその時、 彼の弱りにつけ込んで 入り込むことができた のです。 それ以来、 彼は何度治療を受けても なかなか回復しませんでした。 そして最近、 家族によって この病院へ検査のため 連れて来られたのです。 まさかここで、 あなたたちに 見つかってしまうとは 思いませんでした。 用語について 陽気(ようき) ここでは「明るい性格」という意味ではない。中国の伝統的な陰陽観における「陽の気」で、本書では陽気が盛んな人には陰霊が近づきにくいという宗教的世界観として描かれている。 祖徳(そとく) 祖先が積んだ徳。その余徳が子孫を守り、福をもたらすという中国の伝統的な因果観。 乗虚而入(じょうきょにじゅう) 相手に隙や弱みが生じた時、その機会につけ込むこと。本段では女魂が男性の衰弱した機会を利用した、という意味。 ※「祖徳によって霊から守られる」「事故で弱った時に霊が入り込み、その後治療しても治らなくなった」という説明は、『人間遊記』の宗教的物語です。現実の事故後の症状や治療経過について、霊的存在を医学的原因とするものではありません。
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善書のひかり
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『人間遊記』日本語訳 第二十回⑪ ―― 二十年前に結ばれた怨み ―― 蔡生曰く: もう悲しまないでください。 さあ、 事情を話してください。 もしかすると、 済仏恩師が、 あなたの苦しみを 解決してくださるかもしれません。 それに、 私たちにも あまり時間がありません。 女魂曰く: あの男のことを話すと、 本当に、 良心のない人でした。 二十年前、 私はある靴工場で 働いていました。 あの**陳○○**という男は、 ある会社の 外回りの仕事をしていました。 当時、 私の容姿が それなりに目を引いたため、 彼はいつも、 甘い言葉を並べて、 私の歓心を買おうとしました。 ある時、 彼から郊外へ旅行に行こうと 誘われました。 私は、 何か企みがあるとは 少しも疑っていませんでした。 しかしその夜、 私は彼によって 身体を汚されてしまいました。 その後、 私は彼の言うことに 何でも従うようになり、 働いて得たお金も、 それまでの貯金も、 すべて彼のために 使ってしまいました。 ところがある日、 私が彼に、 妊娠して四か月になる と告げると、 彼は心を鬼にして、 そのまま私を捨て、 遠くへ逃げてしまったのです。 私は、 人も財産も、 すべて失いました。 あまりの悔しさと怒りに、 耐えることができませんでした。 彼は、 仁も義もないことをした。 そして私は、 親戚や友人に 顔向けすることもできないと 思い詰め、 ついには、 自ら命を絶ってしまいました。 本書の物語では、 私の魂が黄泉へ帰った後も、 一筋の怨念だけは 消えることがありませんでした。 そのため冥王から、 夜になると陽世へ戻り、 仇となった男に 報いを求めること を許されたのです。 用語について 花言巧語(かげんこうご) 相手を喜ばせたり信用させたりするための、うわべだけの甘い言葉。 百依百順(ひゃくいひゃくじゅん) 相手の言うことに何でも従い、逆らわないこと。 人財両空(じんざいりょうくう) 人との関係も財産も、双方を失って何も残らなくなること。 黄泉(こうせん) 中国の伝統的表現で、死者の赴く世界・冥界を指す。 冥王(めいおう) 本書の宗教的世界観において、冥界で死者や因果に関わる裁きを司る存在。 ※この段落は、女性が欺かれ、性的被害と遺棄を受けた末に自死したという原書の物語です。被害を受けたことと自死との関係は物語上の叙述であり、被害者に責任があるという意味ではありません。また、死後に怨霊となって報復するという部分は『人間遊記』の宗教的世界観によるものです。
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