肥料だけが半分に減ったら、世界のトウモロコシ収量は26%減る。しかし肥料に加えて農薬や機械も半分に減ったら——国によっては総生産量が50%以上も落ち込む。この違いを理解しないと、私たちは危機の規模を誤る。
私はアールト大学の研究チームの一員として、ランダムフォレストという機械学習で世界の農業ショックを予測した。研究では複数のシナリオを設定している。まず「窒素肥料だけ50%減」では、小麦やトウモロコシの収量が大きく下がる。次に「すべての肥料(窒素・リン・カリ)を50%減」ではさらに広範囲で収量が落ちる。そして「すべての投入資材(肥料+農薬+機械)を50%減」が最も深刻だ。
この最悪シナリオで何が起きるか。世界全体のトウモロコシ生産量は25%以上減る。しかし国ごとの被害には大きな差がある。デンマーク、オマーン、イギリス、ニュージーランド、サウジアラビア——これらの国々では、主要12作物の合計生産量が50%以上も落ち込む。なぜか。これらの国は農業の効率性が極めて高く、化学肥料や農薬のほぼ全量を輸入に依存しているからだ。
皮肉なことに、元々収量が低いサハラ以南のアフリカでは、同じショックでも生産はほとんど減らない。むしろ一部では「より少ない投入資材で高い収量を上げている別の地域」をモデルが参照することで、収量が増えると予測される場所さえある。これは、過剰な化学肥料に頼らなくても高収量を実現できる「潜在力」が世界に残されていることを示している。
私たちが学ぶべきは、効率だけを突き詰めた農業がいかに脆いかという事実だ。デンマークやニュージーランドのような「成功モデル」が、実は最も危機に直面する。では、どの程度のショックまでなら耐えられるのか。その閾値をこれから議論しなければならない。次のショックが来る前に。
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研究論文 『Agricultural input shocks affect crop yields more in the high-yielding areas of the world』(農業投入資材のショックは世界の高収量地域において作物収量により大きな影響を与える)2023年
図6. すべての投入資材が50%減少した場合における、分析対象12作目の総生産量の推移。
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