2024年5月、日本の種苗政策、タネのあり方の問題について、まとめて書きました。それをスイスのNGO、APBREBESが英語版を作りたいということで、作業を始め、今日、それが公開されました。
「英訳ならGoogle TranslateかDeepLで一発でしょ」、いやいや、そうはならない。抽象的などこでも変わらない事実を書いた文章だけだったら、それでもいいかもしれない。でも翻訳というのは1つの価値システムの中で組まれたものを、それとは異なる価値システムの中に投げ入れるという行為。複雑系と複雑系の対話であって、単純な置き換えが可能とは限らない。言葉の意味は伝わっても、事態の理解は進むとは限らない。
翻訳の中でもっとも創造的な行為の1つが、カール・マルクスの『資本論』のロシア語版だと思います。資本主義から社会主義へ、という単線的な歴史観では、ロシアの農村共同体は解体して、資本主義化しなければならない、という短絡した結論になってしまう。農村共同体は解体しなければならないのか、というナロードニキの運動家の問いかけに、マルクスは50代でロシア語を学び、ロシアの研究を行い、それを���定するに至ります。そして彼が前提としていた西欧を中心とした理論を大幅に修正するのです。つまり、翻訳する中で、オリジナルが変わっていくのです。
これが自動翻訳では起きるわけがない。だから自動翻訳に頼り切りになってしまえば、翻訳という行為が持っている創造性を壊してしまうかもしれない。
もちろん、僕の書いたものは『資本論』とは比べるべくもなく、政策の実態の報告に過ぎないのですが、それでも僕の自動翻訳した文章ではまったく海外の人たちに理解を得られず、何度も日本の仕組みを説明することに追われました。その作業の中で、日本の政治システムがいかに問題を抱えているのかも、改めて認識せざるをえなくなりました。
実は、今、世界で農民のタネの権利を奪う国際条約UPOV1991を押しつける最右翼が日本政府であり、UPOV1991のワーキンググループの議長は日本人が務めています。予算もつぎ込み、国際フォーラムを維持してまで、アジア各国にUPOV1991の批准の圧力をかけています。なぜ、日本はこんなにUPOV1991を推進しているのか、その背景は何か、世界各国から疑問として上がってきています。世界の農民の権利をもっとも奪おうとしているのが日本政府といって過言ではないのです。なぜ、そんなことをするのか、大きな疑問になっています。実際に日本はUPOV1991批准以降、日本の新品種開発は半減しました。世界の農民から顰蹙をかってまで進めるこの政策に何のメリットがあるのか、と問わざるをえない状況になっています。
何のために、ここまでタネの権利を攻撃するのか、そして日本のタネはどうなってしまうのか、僕は、現在の日本政府の政策はとても危うい、と考えていますし、その実態をもっと多くの人に知ってほしいと思います。
日本語版を書いてから英語版が出る��でに、2つの種苗関連法(重要品種の育成及びその種苗の生産の振興に関する法律と改正種苗法)が成立しています。そのことも英語版では書き足してありますが、この2法が実施されれば、日本のタネのあり方はまた大きく変わり始めると思います。
その行方には注目せざるをえませんし、日本の政策に根本的に抜けている農民のタネのシステムを守る政策の実現に向けて、働きかけていきたいと思います。
The Erosion of Japan’s Traditional Seed Sector Through Misguided Policy – An Analysis and Impact Assessment of Japanese Seed Policies
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