これは英語の話に見えて、実は人間が世界をどう切り取っているかの話である。日本人は英語を読む時、どうしても文字の上に定規を置きたがる。高校時代の英語教師に、妙に映画ばかり使う者がいた。ある日、その教師は黒板に大きくこう書いた。
I’ll be back.
そして言った。
「これを、私は、だろう、戻る、なんて訳した人はいるか?」
教室は笑った。
だが教師は真面目だった。
「ターミネーターは文法を組み立ててから喋っていない。まず I’ll が出る。自分がこれから何かをする未来の気配が出る。
そのあと be back が来る。戻るという映像が、後ろから追いついてくる。
英語は列車ではなく、弾丸だ」
この説明は、当時は変な先生の映画雑談にしか聞こえなかった。
だが今なら分かる。
英語は、単語を一つずつ日本語に変換して聞くものではない。
話し手の頭の中で、意味の塊が少しずつ前へ出てくる。その前進の仕方を知らないと、耳はずっと置いていかれる。
可算名詞と不可算名詞も同じである。
日本人は「椅子は数えられる。だから a chair」と考える。
もちろん間違いではない。
だがネイティブの感覚に近づくなら、順番が少し違う。
そこに一つ、輪郭を持った物がある。
話し手の意識がそれを一個の存在として掴む。
だから a が出る。そのあとに chair が来る。
つまり a は、文法の札ではなく、世界の切り取り線なのである。
a chairとは、「椅子という単語が可算だから a を付けました」ではない。
今、この世界から一つの椅子をつまみ上げましたという合図なのだ。
バック・トゥ・ザ・フューチャーでも、教師はよく言っていた。
Great Scott!
これを偉大なスコットと訳したら、もうその時点で未来へ行けない、と。
大事なのは単語の意味ではない。
驚きが先にあり、声が破裂し、あとから言葉が乗っている。
英語のリスニングで本当に聞くべきなのは、単語ではなく、その感情と勢いの軌道なのだ。
He is known for his influence on modernizing Japan during the Meiji Era.
これも、紙の上では切れる。
だが話す人間の頭では、おそらくもっと粘土のように連なっている。
He is known for his… ここまでで「彼は何かで知られている」が立ち上がる。
influence on… ここで「影響力だな」と焦点が定まる。
modernizing Japan… ここで「日本の近代化へ与えた影響」が像になる。
during the Meiji Era.
最後に時代の額縁がかかる。
だから音も、文法書のスラッシュ通りには止まらない。known for hisは一つの息になりやすい。
逆に、その後の influence onで意味の焦点が変わるから、わずかな間が生まれることもある。
日本人の耳が迷子になるのは、能力が低いからではない。地図の見方が違っていたのである。
文字で読む英語は、線路のように見える。
だが音で流れる英語は、車道である。
止まる場所は句読点ではない。
話し手の意識がギアを変える場所である。
私から見るに、これはアファンタジア気味の者や、視覚優位の者には特に大きい発見である。
頭の中に映像が勝手に立ち上がる者は、音を聞きながら場面へ飛べる。
だが文字で処理する者は、聞こえた音をいったん字幕に変換しようとする。するとリンキングで字幕が崩れた瞬間、すべてを見失う。
known for hisが「ノウン・フォー・ヒズ」ではなく一つの毛玉のように飛んできた時、文字派の脳は言う。
「待て。今の単語はどこで切れた」
その一瞬で、次のinfluence onはもう通り過ぎている。
英語が聞こえないのではない。
英語の息継ぎを、日本語の定規で裁っていたのである。
ターミネーターの I’ll be backは、戻る未来が先に弾丸のように飛んでくる言葉。
バック・トゥ・ザ・フューチャーの Great Scott!は、意味より先に驚きが爆発する言葉。
そう考えると、英語リスニングとは耳の訓練である前に、他人の脳内の進み方を真似る訓練なのだ。
英語が急に聞き取れるようになる時、人は単語を覚えたのではない。 音の中に、話し手の足跡を見つけたのである。
英語の本を読んでて、全然知らなくてびっくりしたんですが、
可算名詞、不可算名詞っていうの、僕「イスは数えられるから、可算名詞だな、だからaをつけるんだな」みたいな脳で処理をしてたんですが
英語のネイティブスピーカーだと「今から話すものは、あそこにある、あの個別の物体だな」みたいな感覚で、まず「That is a...」まで出て、その後に「aって言っちゃったから、可算名詞を入れないとな」と思って、「chair」というという感覚らしいと。
で、僕、ずっとリスニングが不得意だったんですが、例えば
「He is known for his influence on modernizing Japan during the Meiji Era.」
みたいにいう時に、スラッシュリーディグ的にいうと、
He is known / for his influence / on modernizing Japan / during the Meiji Era
と文章では読んでたんですが、おそらく話す時には
He is (ここまで言ってから考える)
known for his (知られているんだよな、彼の、、でなんだっけ
influence on (ああ、影響力だな、で、なんだっけ
modernizing Japan during(近代化したやつだな、あの期間の、、いつだっけ
the Meiji Era.(ああ、明治のね
みたいな感じで脳が作動しているので、
「known for his」は「ノウゥオイズ」みたいにリンキングされやすい上に、その後にわずかに間がある感じになるという。これをスラッシュリーディング的にいうと、knownで一度切れる感じがするので、音だけだと認知できないんですよね。
僕、言語を、音で処理するわけでもなく、話したことで映像でイメージすることでもなく、ずっと文字で処理してた上に、英語だと読む時と同じようにスラッシュリーディング的に処理してたから、ずっと音の繋がりや間のところをミスって区切りを無意識に作ってしまってたので、
だから前置詞とか接続詞とかその辺りがずっとバグって聞き取れなかったということを認知しました。
これを意識したら急に聞き取れない問題がかなり解決しちゃったんです。
英語の思考の流れを知らないと、ずっと解決しない問題で、めっちゃ面白いなと思いました。
アファンタジア気味であり、かつ視覚優位の人で、外国語の聞き取りで悩んでいる人は、参考になるかも。。